「気をつけてね」と伝えた。でも、何に気をつけるのかは、子どもによって受け取り方が違います。
体育の授業では、動き方を教えるだけでなく、どこで動くか、どこで待つか、いつ止まるかまで具体的にしておきたいところです。
この記事では、安全確認を「授業前・活動中・終了後」に分けて整理します。まずは下の一覧から、次の授業で見直したいところを確認してみてください。
※以下は授業準備のための確認例です。学校・教育委員会の安全管理方針、施設・用具の取扱説明、種目ごとの指導資料と併せて使用してください。この一覧だけで安全を保証するものではありません。
まず押さえたい、安全確認の3段階
| タイミング | 確認の中心 |
|---|---|
| 授業前 | 場・用具・子どもの状態・活動の約束 |
| 活動中 | 人の動き・体調の変化・活動を続けられる条件 |
| 終了後 | けがや不調・用具の状態・次回に変えること |
授業前に一度確認したら終わり、ではありません。用具を移したり、練習からゲームへ切り替えたりしたときにも、見直します。
1.授業前:始められる状態になっているか
場と用具を確認する
- □ 床や地面に、滑る場所・異物・危険な段差がない。
- □ 用具に破損、ぐらつき、緩みなどの異常がない。
- □ 固定が必要な用具は、所定の方法で固定されている。
- □ 動く範囲と待つ場所、戻る経路が重なっていない。
- □ 見学する場所や荷物の置き場が、活動の妨げになっていない。
たとえば、マットがきれいに並んでいても、演技を終えた子が次の子の進路を横切るなら、戻り方を変える必要があります。
「用具の置き方」と「子どもの動き方」を、セットで見るのがポイントです。
施設・設備の点検方法を調べたいときは、文部科学省の「学校における安全点検要領」を確認できます。点検方法の解説動画も案内されています。
子どもの状態と、指導できる範囲を確認する
- □ 体調不良、痛み、けがなど、参加に配慮が必要な子を把握している。
- □ 服装や靴ひも、身に着けているものを活動に合わせて確認している。
- □ 活動の難しさが、子どもの経験や技能に合っている。
- □ 指導・補助が必要な場所を、教師が対応できる数に絞っている。
- □ 活動を控える子の居場所と、見守る方法を決めている。
「苦手だけれど挑戦したい」と「痛いけれど我慢している」は別です。本人の言葉を聞き、必要な配慮を確認してから活動を決めます。
見学中も、安全確認の対象です。記録係などを任せる場合も、本人の体調と居場所を優先しましょう。
暑さや天候、緊急時の連絡を確認する
- □ 活動する場所の暑さや天候を確認し、学校の実施・変更・中止基準と照合している。
- □ 休憩や水分補給ができる環境を用意している。
- □ 応援の呼び方、連絡手段、AEDの場所と取りに行く経路を把握している。
熱中症対策は、気温だけで判断しません。文部科学省は、活動前・活動中の暑さ指数の確認や、中止の判断基準・判断者・伝達方法を事前に共有することを求めています。令和8年5月8日通知
確認が済まないときは、予定どおり始めることを優先せず、活動の変更や延期を判断します。
2.始める前の説明は、「してほしい動き」にする
「危ないことをしない」だけでは、何をすればよいかが曖昧です。
次のように、場所や行動を具体的に伝えます。
| 曖昧になりやすい声かけ | 具体的な伝え方の例 |
|---|---|
| 順番を守って | 待つ人はこの線の後ろ。前の人が出てから始めます |
| 周りに気をつけて | 投げる前に、投げる方向に人がいないか確認します |
| 勝手に取りに行かないで | ボールを拾うのは、全員が投げ終えて合図が出てからです |
| 無理をしないで | 痛みや苦しさがあれば活動をやめ、先生に知らせてください |
これは伝え方の例です。実際の種目や場所に合わせて言い換えてください。
説明を短くすることより、子どもが理解して動けることを優先します。初めての活動では、始め方だけでなく、待ち方・戻り方・止まり方も実際の場所で確認しましょう。
3.活動中:予定を続けるより、変化を見る
活動が始まると、準備したときとは状況が変わります。
- □ 列やグループが広がり、隣の活動に入り込んでいないか。
- □ ボールを追う動きや、元の場所へ戻る動きが交差していないか。
- □ 疲れや痛み、体調不良を訴える子がいないか。
- □ 用具のずれや床の状態、暑さ・天候に変化がないか。
- □ 教師の目が届かない場所で、未確認の活動が始まっていないか。
気になることがあれば、一度活動を止めて確認します。
「もう少し広がって」より、配置を変える
同じ場所で接触しそうになるなら、声かけを繰り返すだけでなく、場の設定を変える方法もあります。
たとえば、次のような見直しです。
- 同時に活動する人数を減らす。
- 待機場所と戻る経路を分ける。
- 教師の指導が必要な活動を同時に増やさない。
- 難しい課題から、確認できている段階へ戻す。
これらは授業設計の例であり、どの種目にも同じ方法が使えるわけではありません。子どもの状態と指導体制に合わせて選びます。
切り替えのときこそ、もう一度確認する
「練習が終わったので、そのままゲームへ」とすると、人数や動く範囲が変わることがあります。
切り替える前に、次の3点を確認しましょう。
- 次の活動では、誰がどこを動くか。
- 待つ人・見る人は、どこにいるか。
- 始める合図と、止める合図が共有できているか。
けがや急な体調不良が起きた場合は、活動を止めて必要な応援を呼び、学校の危機管理マニュアルに沿って対応します。緊急性が疑われる場合に、授業終了まで待って確認することは避けてください。
4.終了後:「けががなかった」で終わらせない
- □ けが、痛み、体調の変化を確認した。
- □ 用具を安全に片付け、異常があれば使用を止めて報告した。
- □ 接触しそうになった場所や、危険を感じた場面を残した。
- □ 次回に変える配置・人数・活動内容を決めた。
- □ 必要な校内共有や保護者への連絡を、学校の手順に沿って行った。
文部科学省の安全点検要領でも、ヒヤリハット事例の活用や改善措置が扱われています。学校における安全点検要領
記録は、学校で決めた様式を優先します。そのうえで、授業の見直しには「どこで・何が・次はどうする」の3点があると整理しやすくなります。
記入例は、次のような形です。
マットの出口で、演技を終えた子と順番を待つ子の動きが重なった。次回は出口と待機場所を分け、戻る経路を授業前に確認する。
これは書き方の例で、実際の事故事例ではありません。
5.共通チェックに、種目ごとの確認を足す
ここまでの一覧は、体育授業に共通する確認の入口です。
器械運動、水泳、柔道などでは、それぞれの用具・施設・技能・指導体制に応じた確認が必要です。共通チェックを終えただけで、実施できると判断しないようにします。
体育.netでは、種目別に授業の進め方や公式資料へのリンクをまとめています。
公式の安全対策を確認するときは、スポーツ庁の「スポーツの事故防止について」も入口になります。指導者向けのガイドラインやチェックリストが案内されています。
授業の流れと配布資料まで、準備したい先生へ
安全確認と併せて、「今日は何をするか」「どこまで進んだか」を生徒と共有する資料も整えておきたいところです。
中学校の柔道を担当する先生向けに、体育.netでは生徒用の技能練習表PDF・編集用Word・教師用実践ガイドPDFをまとめた授業実践パックを用意しています。
授業の順序や学習の記録を共有するための教材です。まず販売ページ内の無料実践記事で進め方を確認し、学校の授業に合うか検討してください。
※有料教材です。安全に関する研修や、学校の安全管理体制を代替するものではありません。
ほかの種目について教材研究を進めたいときは、体育の図書ライブラリーから関連書籍を探せます。
まとめ:安全確認を、授業の流れに組み込む
授業前は、場・用具・子どもの状態を確認する。活動中は、変化を見て必要なら止める。終了後は、次回に変えることを残す。
大切なのは、チェック欄を埋めることだけではありません。
確認した結果を、今日の活動や次の授業に反映すること。
まずは次の授業で、動く場所だけでなく「待つ場所・戻る経路・切り替え方」まで見直してみてください。