高さを上げる前に、教えたいことがあります。
- バーが気になり、踏み切りの直前で止まってしまう。
- 「足を上げて」だけでは、跳び方が変わらない。
- 記録差が大きく、苦手な生徒の練習をどう組むか迷う。
まずは低い高さで、「片足で上へ跳び、足から着地できた」をつくる。
はさみ跳びを中心に、足の順序→短い助走→力強い踏み切りへつなぎます。高さだけでなく、止まらずに踏み切れたことや、同じ高さを安定して越えられたことも成果にします。
公式資料を参考に整理した授業案です。6時間の流れやコース名は記事用の提案で、特定の学校での実施記録ではありません。設備と生徒の状態に合わせ、教師が実施可否を判断してください。
はさみ跳びは、片足で踏み切り、左右の脚を順にバーの向こうへ運ぶ跳び方です。足から着地する練習を基本にし、背中・頭・腹から落ちる跳び方へ自己判断で変えさせません。はさみ跳びでも、着地場所や用具の確認は欠かせません。
背面跳びは、学習指導要領解説でも技能・用具などの条件と安全を考慮した段階的な学びを要するとされています。ベリーロールも「背面跳びより安全だから」という理由では採用せず、本記事の練習からは外しています。文部科学省の説明(冊子p.96)
見せたい場面が選べる|実技と授業づくりの動画
まず1本目で全体の動きを見せます。2回目は「先に越える足はどちら?」など、見るところを一つに絞ります。
学研|助走~踏み切り~はさみ跳び
中学校向け体育実技の動画。助走から踏み切る足、先に越える足、着地までを続けて確認します。
出典:学研「学校教育ネット」陸上競技。同じページにある背面跳びの動画は、本記事の必修練習としては掲載していません。
苦手な生徒への導入・場づくりを考える2本
文部科学省|小学校高学年の走り高跳び
小学校段階の動きに戻って確認したいときの補助資料です。中学生向けの高さ・回数を示す動画ではありません。
スポーツ庁|高学年・走り高跳びの授業の工夫
教師が活動の組み方を考える参考に。感染症対策のために制作された小学校向け資料で、当時の対策を現在の一律ルールとして扱うものではありません。
出典:文部科学省のデジタル教材/スポーツ庁の教師用指導資料。まず教師が内容を確認し、その日の課題に合う部分を見せます。
一望してから練習へ|はさみ跳びの公式図解
図の中で「踏み切る足→先に越える足→後から越える足」を追ってみます。脚を高く振るだけでなく、体を上へ運ぶ踏み切りがあることを確認します。

バーへ突っ込まず、踏み切る。
振り上げ足→踏み切り足。
先に越えた足から、膝をやわらかく。
日本陸連の例は斜め約45度の直線助走・5~7歩です。本記事では、足順を確かめる1~3歩から始め、できてきたら5歩程度へ進む授業用の段階を提案します。
原本は部活動向けの全5ページで、背面跳びの練習も含みます。資料の順に全員を背面跳びまで進める単元ではありません。
練習は3段階|高さより先に、動きをつなぐ
① バーなしで「どの足から?」を確かめる
教師が小さな動きで、踏み切る足と反対の足を先に運ぶ様子を見せます。最初は跳ぶ高さを求めず、一歩踏み出す→反対の膝を上げる→足から着地する流れを、教師が確認した着地面で試します。
バーなしで左右を試し、踏み切りやすい足を確認します。はさみ跳びではバーから遠い側の足で踏み切る配置が基本です。利き手だけで助走側を決めません。
| 助走側 ※着地場所に向かって見る | 踏み切る足 | 先に越える・最初に着く足 |
|---|---|---|
| 左側から | 左足 | 右足 |
| 右側から | 右足 | 左足 |
教師は、生徒と同じ向きで示範すると左右を伝えやすくなります。上の表は直線助走のはさみ跳び用で、背面跳びの説明ではありません。
② 低い目標で、3歩のはさみ跳び
足順が分かったら、短い助走から低い目標を越えます。教師が設置した高跳び用の柔らかいバー等を使い、余裕をもって越えられ、足から安定して着地できる高さにします。怖さがある場合は、バーなしへ戻れます。
足だけでまたぐのではなく、踏み切りで体を上へ。先に越えた足を着地へ運び、後から踏み切り足を抜きます。「膝を固めて着く」「後ろへ倒れて越える」形にはしません。
3歩は「走り出した後の接地」を左右とも数え、3歩目で踏み切ります。左踏み切りなら左→右→左、右なら右→左→右。出発時の構えも教師とそろえます。足が合わないときは、バーの前で一歩足すより、出発位置と最初の足を見直します。
③ 5歩程度へ|助走から上への動きに変える
3歩で止まらず跳べたら、同じ低い高さで助走を少し伸ばします。全力疾走ではなく、踏み切りまで動きをつなげられる速さに。最後だけ深くしゃがんだり、バーを避けて横へ投げ出したりしないよう見ます。
踏み切るときに上体が倒れ込まず、振り上げ足と腕が体を引き上げるかを見ます。腰だけを反らせる指示ではありません。助走を伸ばして崩れたら、短い助走へ戻します。
助走の出発点には、走路外に色・番号の目印を置けます。「青2、左足から5歩」などを記録すると、毎回迷いにくくなります。踏み切り位置は支柱・バー・着地面との関係を教師が確認し、全員に一つの距離を当てはめません。
3つの課題から選ぶ|高さの序列にしない
コース名は練習の目的です。低い・中くらい・高い生徒に固定せず、教師と相談して行き来します。着地場所が1か所なら、3か所を同時に跳ばせる必要はありません。
バーなし・低い目標で足順と着地を確認。
目安:止まらず足を順に運べる。
同じ低い高さを、3~5歩で繰り返す。
目安:同じ足・位置で踏み切れる。
動きが安定したら、教師と相談して高さを少し上げる。
目安:上げた後も着地まで安定。
高さを上げずに、同じ高さの成功を重ねる挑戦でもかまいません。成功回数を競わせるために、疲れている生徒へ跳躍を追加させないようにします。
つまずきが見えたら、練習を一つ戻す
| 見えた姿 | 次の練習 | 短い声かけ |
|---|---|---|
| 手前で止まる | 目標を下げるか外し、短い助走へ。着地の不安も聞く。 | 「バーなしで同じリズムをやってみよう」 |
| 両足で跳ぼうとする | 一歩の踏み切りで足順を再確認。 | 「地面を押す足はどちら?」 |
| バーへ突っ込む | 助走を短くし、踏み切りで上体と腰が上がるかを見る。 | 「遠くへではなく、まず上へ」 |
| 後の足が引っかかる | 低い高さで先の足→後の足の順序を動画と照合。 | 「後の足まで順番に運ぼう」 |
| 踏み切り位置がばらつく | 出発点・最初の足・歩数をそろえる。 | 「毎回同じ場所から出よう」 |
| 着地で倒れる・マット外へ出そう | 試技を止め、場・速度・高さを教師が見直す。 | 「着地まで戻して確かめよう」 |
跳ぶ前の準備|着地場所と動線を先に決める
着地面の材質・広さ・段差、マットの用途や固定方法、支柱・バーの設置は、学校の安全基準と用具の説明書に沿って確認します。薄い体操マットを置いただけで十分とは判断しません。着地場所に不安がある日は、助走や足順の確認などに課題を変更します。
- 着地面:ずれ・隙間・濡れ・破損・周囲の硬い物を確認。足から着く練習に合う条件かを確かめる。柔らかければ何でもよいわけではありません。
- 用具:バーを固定したり、ひもを外れないように張ったりしない。ゴム等も、引っかかった際の反動や絡まりを確認し、専用品を説明書どおり使う。人が手で持った物を跳び越えさせない。
- 左右の助走:同じ着地場所へ左右から同時に出発させない。教師の合図で片側ずつ交代する。
- 待つ・見る:助走路、支柱のそば、着地の先を避ける。次の生徒は着地場所と用具周辺が空くまで出発しない。
- 戻す・調整する:跳躍が終わり、全員が停止してから用具を戻す。仲間が勝手に高さを変えない。
- 実施判断:痛み・疲労・暑さ・恐怖感に応じて中止や変更。生徒同士に空中の体を受け止めさせず、教師が見守れる範囲で行う。
教師の合図で1人ずつ。
側方の安全な場所で一点を見る。
試技の終了と停止を確認して動く。
背面跳び・ベリーロールはどう扱う?
「そり跳び」は走り幅跳びの跳び方の名称です。走り高跳びで背を向けて越えるのは「背面跳び」。ベリーロールは別の跳び方で、はさみ跳びと同じものではありません。
本記事は、一般の授業で扱うはさみ跳びの案です。背面跳びは一律禁止という意味ではありませんが、指導者の専門性、生徒の技能、専用の着地設備と段階指導などを検討する別の計画が必要です。ベリーロールも名前や印象だけで安全と判断せず、本記事から見よう見まねで進めません。
6時間の単元モデル|試す・直す・もう一度
| 時間 | 主な活動 | 見るポイント |
|---|---|---|
| 1 | 安全と足順を確認。バーなし→低い目標で試す。 | 踏み切り足、怖さ、着地。 |
| 2 | 一歩~3歩のはさみ跳び。動画と示範で再確認。 | 上への踏み切りと足の順序。 |
| 3 | 3~5歩の助走をそろえる。出発点を記録。 | 止まらず同じ足で踏み切れるか。 |
| 4 | 課題別練習。ペアの助言を受けて再挑戦。 | 自分に必要な一つを変える。 |
| 5 | 同じ高さの安定、または無理のない記録への挑戦。 | 高さを変えた後も動きと着地が保てるか。 |
| 6 | 記録会形式で確認し、練習前後の変化を振り返る。 | 記録だけでなく、改善した動きを説明。 |
授業用のモデルです。時数は年間計画に合わせて調整し、6時間で高さや技を一律に達成させる計画にはしません。
50分の例|説明は一点、練習は何度か
| 時間 | 内容 |
|---|---|
| 0~8分 | 健康・場の確認、準備運動、軽い動きづくり。 |
| 8~15分 | 今日の観察点を決める。動画・示範→低い高さで確認。 |
| 15~35分 | 役割交代で練習。助言を一つ受け、同じ条件で再挑戦。 |
| 35~43分 | 動きが安定した条件で記録・確認。高さ変更は教師と相談。 |
| 43~50分 | 動きと記録を振り返る。整理運動、合図で片付け。 |
記録会でも、早く脱落させない
練習用の柔らかいバーによる記録と、競技用バーの記録は区別します。測り方や接触時の扱いを最初にそろえ、同じ条件で変化を見ます。「失敗したら授業終了」にせず、練習に戻れる時間を用意します。
評価は最高記録だけで決めません。助走と踏み切りのつながり、課題に合う練習の選択、具体的な助言、安全な役割分担を、学年の目標に沿って見取ります。
投影・板書で使える3つの確認カード
踏み切り:右・左 助走側:右・左
助走:__歩 出発の目印:____
今日の高さ・用具:____
□ 助走:手前で止まらず踏み切る
□ 踏み切り:上体を起こし、体を上へ運ぶ
□ 足の順序:先の足→後の足→足から着地
仲間から:「____ができていたよ」
次に試すこと:____
条件:____ 結果:____
前よりよくなった動き:____
次回の課題:____
教材研究をもう一歩進める参考書
『基礎から身につく陸上競技』
陸上競技指導教本アンダー16・19[初級編]
日本陸上競技連盟 編/大修館書店
「走高跳の技術」「走高跳の練習方法」を収録。踏み切りや練習の段階を、競技指導の視点でも確認したい先生へ。授業では、生徒と設備に合う内容を選んで使います。
広告リンク。版・価格・在庫は購入先でご確認ください。
体育の書籍ライブラリーで「陸上運動・陸上競技」を表示し、「走高跳」「走り高跳び」などのキーワードでも探せます。
助走や踏み切りを別の種目と比べたいときは、走り幅跳びの授業やハードル走の授業も参考にできます。跳び出す方向などの違いを区別して扱います。
次の授業準備に|中学校の授業実践パック
配布用の練習表や、編集できる資料を用意したい先生へ。柔道・バレーボール・ダンスでは、授業で使える教材パックをご用意しています。
柔道|授業実践パック技能練習表・Word・教師用ガイド内容・価格を見る →
バレーボール|授業実践パック技能練習表・学習記録・Word内容・価格を見る →
ダンス|授業実践パック構成表・評価シート・Excel内容・価格を見る →3教材はそれぞれ別売りです。