中学校サッカーの授業で、こんなことはありませんか
- ボールのある場所へ全員が集まり、コートの空いている場所を使えない
- 経験者だけがボールを運び、苦手な生徒は触れないままゲームが終わる
- ボールを持っていない生徒へ「動こう」と言っても、どこへ動くのか伝わらない
- パスやドリブルを練習しても、ゲームになると元の動きへ戻ってしまう
- 勝敗や得点だけが話題になり、何が上達したのか振り返りにくい
結論から言うと
中学校サッカーは、いきなり大人数のゲームへ入るより、個人・二人の技能練習→小ゲーム→中ゲーム→大ゲームと段階的に人数と広さを増やす方が、全員がボールと判断に関われます。各時間の最後には必ず短いゲームを置き、人数が増えて動きが分からなくなったら小ゲームへ戻します。
この記事でわかること
- 小ゲーム、中ゲーム、大ゲームへ広げる8時間の単元モデル
- インサイドキック、2対1、3対1、4対2をゲームへつなぐ方法
- ボールを持たないときの動きを伝える言葉と図
- JFA・スポーツ庁の公式動画で確認できる活動例
- 経験者と初心者が同じ授業で学ぶための役割設定
- そのまま板書・学習カードへ使える5つの確認項目
この記事は、筆者が中学校2年生で行った授業実践を土台に、現在の中学校学習指導要領解説とJFAの公式資料を確認し、一般的な授業で使いやすい8時間へ再構成したものです。人数、コート、ボール、ゴール、天候、生徒の技能差に応じて調整してください。
王道の進め方|個人・二人から、小ゲーム、中ゲーム、大ゲームへ
最初から11対11に近い大ゲームを行うと、経験者は何度もボールへ触れますが、初心者は一度も触れないまま終わることがあります。授業では、人数とコートを少しずつ広げます。ここでいう「大ゲーム」も、必ずしも11対11ではありません。7対7・8対8程度でも、十分に攻守のまとまりを学べます。
止める、蹴る、運ぶ
2対1〜4対4
5対5・6対6
7対7・8対8
大切なのは、技能練習を長く続けて最後だけゲームにすることではありません。毎時間、短くてもゲームを入れることです。JFAの学校体育向けオンラインレッスンも、ウォーミングアップ、活動1、活動2、ゲームという構成を基本とし、ゲームから逆算して授業を組み立てています。
小学校向けですが、ボールコントロール、ボール回し、4対4+GKまでのつなぎ方は、中学校初心者の導入にも使えます。映像をそのまま見せる場合は、学年と技能に合わせて活動時間・コート・ルールを調整します。
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実際の生徒の声|触れない・責められることが苦手意識につながっていた
当時の中学校2年生40名の事前アンケートでは、サッカー経験者は14名でした。サッカーを「少し嫌い」「嫌い」と答えた生徒の理由には、ボールへ触れない、狙った場所へパスを出せない、連携が取れない、失敗を笑われたり責められたりする、といった内容がありました。
一方、学びたい内容としては、仲間との連携プレーが30名、基本的な個人技能が23名でした。この二つを別々に扱うのではなく、「パスを出せる」「受けられる場所へ動く」「仲間が受けやすい声をかける」を一つの学習としてつなげました。
経験者に任せるのは、ゲームではなく仲間の上達
経験者へ「初心者へパスを回すこと」だけを求めると、経験者が我慢する授業になりがちです。見本を一度見せる、助言を一つに絞る、仲間へ受けやすいパスを出す、失敗を責めない、といった役割を具体化します。苦手な生徒は、自分の技能課題を一つ選び、ゲームの中で試します。
ボールに集まる状態を、二つの図で確認する
「広がろう」だけでは、どこへ動けばよいか曖昧です。まず、ボール保持者の周囲へ味方が重なっている状態と、左右・後方へパスコースをつくっている状態を並べます。
味方同士が重なり、パスを出してもすぐ相手に囲まれます。
ボール保持者から見て、前だけでなく左右・後方にも味方がいます。
まず伝える三つの言葉
- 顔を上げる:ボールだけでなく、味方・相手・ゴールを見る
- 重ならない:ボール保持者から見て、左右の違う方向へ立つ
- 出したら動く:パスを出した場所に止まらず、次に受けられる場所へ移る
学年で深める|中1・2と中3の違い
現行の中学校学習指導要領解説では、ゴール型の「ボールを持たないときの動き」が学年段階に応じて示されています。記事の活動をすべて同じ到達点にするのではなく、学年によって見る動きを変えます。
| 学年 | 中心にする動き | 授業で使う短い言葉 |
|---|---|---|
| 中学校1・2年 | ボールとゴールが同時に見える場所へ立つ。パスを受けるために、ゴール前の空いている場所へ動く。ボールを持つ相手をマークする。 | 「ボールとゴールを見よう」 「空いている前へ入ろう」 「ボールを持つ相手を見る」 |
| 中学校3年 | 守備者を引きつけて空間をつくる。パス後に次のパスを受ける。味方の進行方向を空ける。ゴール前の空いた場所をカバーする。 | 「引きつけて離れよう」 「出した後の次へ」 「味方の前を空けよう」 |
8時間の単元計画|毎時間ゲームを入れ、少しずつ広げる
次のモデルでは、前半に技能と小ゲーム、中盤に中ゲーム、後半に大ゲームを置きます。ゲームは最終時だけでなく毎時間行います。進み過ぎたと感じたら、前の人数へ戻って構いません。
| 時 | ねらい | 活動の中心 |
|---|---|---|
| 1 | ボールに慣れ、ゲームを知る | 一人一球のボール操作、二人のパス。最後は3対3で、今の動きを確かめる。 |
| 2 | 止める・正確に蹴る | インサイドキックとコントロール。2対1を行い、最後は3対3。 |
| 3 | 左右へサポートする | 3対1で二つのパスコースをつくる。3対3または4対4で試す。 |
| 4 | 幅と後方を使う | 4対1から4対2。前だけでなく後方にも逃げ道をつくり、4対4へつなぐ。 |
| 5 | 空いた側から得点する | パスからのシュート、2対1からのシュート、4ゴールゲーム。 |
| 6 | 中ゲームへ広げる | 5対5・6対6。パス後の動き、左右の選択肢、攻守の切り替えを確かめる。 |
| 7 | チームの課題を解決する | 必要な小ゲームを選んで復習した後、6対6・7対7で作戦を試す。 |
| 8 | 大ゲームで変化を確かめる | 7対7・8対8。技能、位置取り、仲間への関わりを振り返る。 |
8時間すべてを予定通り進めなくてよい
4対4で全員が動けていないのに、人数だけ6対6へ増やしても学習は深まりません。3対1へ戻す、コートを横へ広げる、守備を一人減らすなど、その時間に成功が生まれる条件へ戻します。
50分授業の基本形|技能、小ゲーム、ゲームを一時間でつなぐ
内容が変わっても、授業の形はなるべくそろえます。説明を増やすより、短く動いて、ゲームで試し、必要なら一度止めて確認する方が、生徒も見通しを持ちやすくなります。
| 時間 | 生徒の活動 | 先生が見ること・声かけ |
|---|---|---|
| 0〜6分 | 健康観察、安全確認、準備運動、本時の目標 | 説明は一つ。「今日はパスを出した後の動きを見る」など、観点を絞る。 |
| 6〜14分 | 一人一球のボール操作、または二人組のパス | 待ち時間をつくらない。技能のポイントも一度に一つだけ伝える。 |
| 14〜25分 | 2対1、3対1、4対2など、その日の小ゲーム | 成功が少なければ、守備を減らす、コートを広げる、歩く守備にする。 |
| 25〜43分 | 3対3・4対4、または単元後半の5対5・6対6 | 練習した動きが一度でも出た場面を止めずに記録し、交代時に短く返す。 |
| 43〜47分 | 課題を一つ変えて再ゲーム | 「左右に一人ずつ立つ」「パス後に三歩動く」など、次の一手を明確にする。 |
| 47〜50分 | 振り返り、共有、片付け | 「味方が助かった動きは何か」「次に一つ変えることは何か」 |
2対1から4対2へ|人数を増やす意味を明確にする
2対1:相手を見て、運ぶかパスかを選ぶ
攻撃二人に守備一人を置きます。ボール保持者は、守備が自分へ近づけば味方へパスし、守備が味方のパスコースを消していれば自分で運びます。受け手は横へ逃げるだけでなく、前へ進める角度に動きます。最初は小さなゴールを二つ置くと、攻撃方向が分かりやすくなります。
3対1:左右の二つの選択肢をつくる
3人の攻撃側は、ボール保持者を頂点にした三角形をつくります。二人の受け手が同じ方向へ並ばないことが最初の課題です。守備が奪う、外へ出す、または設定した回数のパスがつながったら交代します。
5〜6人組なら、プレーしていない生徒を観察・助言役にします。観察するのは「うまい・下手」ではなく、左右にパスコースがあったかの一つに絞ります。短時間で交代し、運動時間を確保します。
4対1:幅に加えて、後方の逃げ道をつくる
攻撃が4人になると、左右の幅だけでなく、ボールを後方へ戻す「深み」がつくれます。前へ進めないときに無理なパスを出さず、いったん戻して攻撃をやり直す経験をさせます。
4対2:見る相手が増えた中で選ぶ
守備を2人へ増やし、受け手は相手の間へ立つのか、外側へ広がるのかを選びます。経験者にとって4対1が易しい場合は、ワンタッチ・ツータッチなど触球数を調整できます。ただし、全員へ同じ制限をかけず、技能に応じて選びます。
「15回つないだら成功」は目安
当時の実践では、守備が奪う・外へ出す、または15回つながることを交代の目安にしました。初心者が多い場合は5回、慣れた班は10回など、短時間で成功と交代が生まれる回数に変えます。
4ゴールゲーム|ボールの周囲ではなく、空いた側を見る
得点する技能の時間では、ドリブルからのシュート、パスからのシュート、壁パスからのシュートを行い、4ゴールゲームへつなげました。二つのゴールだけでは全員が中央へ集まりやすいとき、攻撃できるゴールを増やすと、反対側の空間へ目を向けやすくなります。
簡単な設定例
- 長方形のコート四隅付近に、コーン2本で小さなゴールをつくる
- 一方のチームは相手側の二つのゴール、もう一方は反対側の二つを攻める
- 得点後とボールが外へ出た後の再開方法を、授業前に一つへそろえる
- まずはドリブル通過、慣れたらパスを受けて通過など、条件を変える
ルールを増やすことが目的ではありません。「ボールの近くに集まる」以外の選択肢が見えるように、ゴールの位置と人数を変えます。変化が出なければ、人数を減らす、コートを横へ広げる、ゲームを短く区切る方法を先に試します。
動画で授業の動きを確認する|スポーツ庁の公式例
文章だけでは、活動の間隔や声かけ、ボールの動く速さを想像しにくいことがあります。次の二本は高等学校向けの公式動画ですが、中学校の発展段階を考える資料として使えます。中学校で取り入れるときは、人数を減らす、コートを広げる、守備の強度を下げるなど、成功しやすい条件へ調整します。
ゲームを見る観点|数えるのは触球数だけではない
全員が同じ回数ボールへ触ることは、サッカーの目的ではありません。また、触球数が少なくても、相手を引きつける、パスコースをつくる、守備で空間を埋めるなど、ゲームへ関わっていることがあります。
| 見る場面 | チェックする動き | 生徒へ返す問い |
|---|---|---|
| 味方がボールを持った | 左右・前後に、複数のパスコースができたか | 「持っている人から、味方は何人見えた?」 |
| 自分がパスを出した | その場に止まらず、次に受けられる場所へ動いたか | 「出した後、どこへ動くともう一度受けられる?」 |
| 前へ進めなかった | 後方へ戻す選択肢、反対側の空間があったか | 「前が無理なら、どこからやり直せる?」 |
| 相手がボールを持った | ボールとゴールの間、または担当する相手を見られたか | 「守るゴールと相手を同時に見られる場所は?」 |
経験者と初心者を同じ授業で動かす
経験者の課題
- 仲間が扱いやすいパスを出す
- 見本は一度、助言は一つ
- パス後に動き、仲間の選択肢を増やす
- 失敗を責めず、次のプレーへ切り替える
初心者の課題
- 止めてから蹴る
- 味方が見える向きで受ける
- ボール保持者と重ならない場所へ動く
- 「右」「戻せる」など短く声を出す
チーム分けは技能差だけで固定せず、安全、関係性、役割を考えます。経験者が常に指導役、初心者が常に教わる側にならないよう、観察、記録、作戦、用具、審判などの役割も交代します。
評価の見取り|現在の3観点へ整理する
| 観点 | 見取りの例 | 残すもの |
|---|---|---|
| 知識・技能 | 相手と味方を見ながら受けやすいパスを出し、ボールとゴールが見える場所や空いている場所へ動いている。 | ゲーム観察、簡易ゲームの動き |
| 思考・判断・表現 | 個人やチームの課題を見つけ、必要な練習、位置取り、作戦を選び、理由を伝えている。 | 作戦シート、振り返り、助言 |
| 主体的に学習に取り組む態度 | フェアなプレーと安全を守り、準備、観察、審判などの役割を果たし、仲間の失敗を受け入れている。 | 活動観察、役割記録、カード |
得点数やボールへ触った回数だけを評価へ直結させません。パスを受ける場所をつくった動き、味方が前へ進めるように離れた動き、失敗後の切り替えも見取ります。
安全管理|接触・用具・コートの境界を先に決める
授業前と活動中の確認
- 健康観察、天候、暑さ、グラウンドの凹凸・ぬかるみ・石を確認する
- ゴールを使う場合は転倒防止措置を確認し、生徒に移動させるときは教師が管理する
- コーンゴール、隣のコート、待機者の位置を離し、ボールが交差しない動線をつくる
- スライディング、背後からの強い接触、危険なキックを認めないことを共通理解にする
- キーパーを置く場合は、接触、飛び込み、ボールを蹴る足との衝突についてルールを決める
- ボールが道路や別活動の区域へ出た場合は、勝手に追わず教師の合図に従う
- 痛み、めまい、吐き気、強い息苦しさ、反応の異常があれば直ちに中止する
ゲームを小さくするとボールへ関わる回数は増えますが、人数に対してコートが狭過ぎると接触も増えます。生徒の技能と人数に合わせ、コート幅、ゲーム人数、ボール数を調整します。
そのまま使える5つの確認カード
以下はこの記事内で無料で使える確認用の文面です。画面を見せたり、必要な項目を授業のノートへ書き写したりして使えます。別売りのサッカー教材ではありません。
① 今日のめあて
□ ボールを持っている人の左右へ動く
□ パスを出した後、次に受けられる場所へ動く
□ 味方が扱いやすい強さと方向へパスを出す
② 始める前の安全
□ コート、ゴール、コーン、隣の班との間隔を確認した
□ 靴ひも、服装、装身具を確認した
□ 接触、ボールが外へ出たとき、中止の合図のルールを確認した
③ ボールを持たないとき
□ ボールとゴールが見える向きになった
□ 味方と重ならず、左右または後方に立った
□ パスの後に止まらず、次の場所へ動いた
④ 仲間を見る
□ 良かった動きを一つ具体的に伝えた
□ 助言は一度に一つにした
□ 失敗を責めず、次のプレーにつながる声をかけた
⑤ 振り返り
今日できた動き:______________
仲間が助かった動き:____________
次のゲームで変えること:__________
教材研究に役立つ参考書
中学校の全学年・単元計画・評価まで確認したい
日本サッカー協会『中学校体育 サッカー指導の教科書』。第1〜3学年の単元計画、評価規準、展開例、学習カードに加え、3対1、4対2、4ゴールゲームなどの活動例を確認できます。サッカー専門外の先生を念頭に作られた公式の指導書です。
次の授業準備に|中学校の授業実践パック
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参考資料
- 文部科学省:中学校学習指導要領(平成29年告示)解説 保健体育編(令和6年12月一部改訂)
- 日本サッカー協会:学校体育サッカー指導のオンラインレッスン
- 日本サッカー協会:「中学校体育 サッカー指導の教科書」刊行案内
- 日本サッカー協会:中学校部活動サッカー指導の手引き
- スポーツ庁:体育・保健体育の教師用指導資料(映像一覧)
※本記事は授業づくりの参考情報です。8時間モデル、50分授業、4ゴールゲームは一つの実践例であり、唯一の指導方法ではありません。実施時は公式資料、学校の年間指導計画と安全管理体制、施設、人数、生徒の健康・技能・経験差に応じて判断してください。