中2/保健/傷害の防止/8 心肺蘇生法とAED
- 言葉と手順が多く、初動や協力の意味が伝わりにくい。
- 動画視聴だけで「できる」と評価してよいか迷う。
まず先生が、倒れた人を見つけた場面から演じる。生徒は、覚えた流れを「声と動き」にしてみます。
棒人間や身近な物を描き、絵を指して問い、教科書の言葉で確かめる授業案です。板書は完成図を写すだけでなく、生徒の考えを描き足して使います。
筆者の実践を記した部分と、資料に基づく授業提案を分けて紹介します。台詞・架空条件・時間配分は再構成した例で、文科省・出版社の指定授業案ではありません。
筆者の実践から
まず先生が演じる。「人が倒れている!」から救命へ
私の授業では、倒れた人を見つけた場面から、まず私自身が一連の行動を演じて見せていました。その後に流れを板書し、生徒が順番を確かめて、グループで一人ずつ練習する形です。以下の台詞と実習案は、その進め方を2025年の市民用指針に合わせて組み直した提案です。
いざというときに「最初の一歩」が出るように、今は声と動きを練習しよう。全部思い出せなくても、119番で助言をもらえるよ。
生徒が動く場面へ
初回は先生の実演を止めずに見る。二回目に「今何をした?」と確認しながら板書。その後は救助役・119番役・AED役・観察役を交代し、訓練用人形とAEDトレーナーで試します。
知識へ戻す:セリフを完璧に暗唱できるかだけでなく、安全・早い通報・呼吸の判断・胸骨圧迫・AEDの協力につなげられるかを確かめる。
先生自身の話を入れるなら・配慮
授業は訓練用具で行います。生徒を倒れた人役にして胸を押しません。実際の救命では暗記が完成するのを待たず、周囲と119番の支えを得て行動します。
中2保健の全体像|今は「心肺蘇生法とAED」
東京書籍・令和7年度版2年の公開指導計画を例にした位置の案内です。全国共通の順序・実施月ではなく、出版社や学校で区切りが異なります。体育理論はこの一覧に含めていません。
傷害の防止|8つの項目
- 1 傷害の発生要因
- 2 交通事故の発生要因
- 3 交通事故の危険予測と回避
- 4 犯罪被害の防止
- 5 自然災害による危険
- 6 自然災害による傷害の防止
- 7 応急手当の意義と方法
- 8 心肺蘇生法とAED〈今ここ〉
もう一つのまとまり|健康な生活と疾病の予防②
- 1 生活習慣病の起こり方
- 2 生活習慣病の予防
- 3 がんとその予防
- 4 喫煙の害と健康
- 5 飲酒の害と健康
- 6 薬物乱用の害と健康
- 7 薬物乱用の社会的な影響
- 8 喫煙・飲酒・薬物乱用への対処
教科書のどこで使う?
| 出版社・令和7年度版〜 | 公開計画・構成表での関連位置 |
|---|---|
| 東京書籍 新編 新しい保健体育 | 2年・保健編3章(8)p.84〜85。実習資料p.180〜183も参照 |
| 大修館書店 最新 中学校保健体育 | 2年・保健④(6)心肺蘇生法の流れ p.114〜115、(7)実習 p.116〜117 |
東京書籍|令和7年度版・2年の年間指導計画/大修館書店|令和7年度〜・教科書の構成と内容で確認。教科書本文の全頁を閲覧したものではありません。名称・順序・配当時間は採択版と学校の年間計画を優先してください。
中心の問い|もし目の前で人が倒れたら。最初に何をして、どう助けをつなぐだろう。
導入では訓練用人形を使い、教師が発見・反応の確認・通報とAEDの依頼・呼吸の判断からの対応を演じます。初回は流れを見せ、二回目に止めながら意味と順番を板書します。
胸骨圧迫とAEDの使用などは、言葉を暗記するだけでなく、訓練用具と指導者の下で実習して学ぶ内容です。AEDは音声案内に従い、解析・電気ショック時は誰も傷病者に触れていないことを確認します。
手順は「救急蘇生法の指針2025 市民用」の公開訂正版(2026年9月10日更新)の冊子p.20〜29・32〜37と照合しました。以下は成人が倒れた架空場面を使う独自の授業用整理です。公式図4の転載ではなく、救命講習の代わりでもありません。授業前には消防等と用具・学校の緊急対応を確認します。
内容の範囲:現行解説・冊子p.219〜222。発問・架空の条件・板書構成は体育.netの提案です。
- 訓練用人形と、そのそばの人を描く。
- 電話とAEDの記号を、関わる人のそばへ足す。誰がどの役をするか、言葉で確認する。
- 役割間を矢印でつなぐ。これは役割の概念図で、救命手順のフローチャートではないと示す。
体育.net作成の板書例。人・物・矢印を簡略化した概念図で、医学的な構造図や実際の地図、処置の手順図ではありません。描くことが難しい場合は、印刷して指し示す方法でも使えます。
先生の実演用|声と動きをつなぐ台本
成人が倒れた架空場面の例です。まず安全を確認し、以降の手技は訓練用人形・AEDトレーナーで示します。以下の台詞は指針の文章の引用ではなく、授業用に作った例です。
板書で整理する、判断と行動の流れ
成人の架空場面を使う独自の授業用整理。公式のBLS図を転載・なぞり描きしたものではありません。分岐を一つずつ指し、訓練用具で確かめます。
1 安全と反応を確かめる
周囲の安全を見て、呼び掛けと肩への軽い刺激で反応を確認する。
反応がある:訴えや様子を確認し、必要なら119番。反応がない・判断に迷う:2へ。
2 119番通報・AEDを手配
応援を呼び、協力者へ具体的に依頼する。一人なら自分で119番し、スピーカー等で助言を受ける。
一人でAEDを取りに行くのは、すぐ近くにあると分かる場合。遠くを探して通報や救命を遅らせない。
3 普段どおりの呼吸か、10秒以内に判断
胸・腹の動きを観察する。明らかに普段どおりでなければ、10秒になるまで待つ必要はない。
普段どおりの呼吸がある:観察を続け、応援や救急隊を待つ。呼吸がなくなる・異常になる場合は、ただちに胸骨圧迫へ。
呼吸なし/しゃくりあげるような異常な呼吸/迷う・分からない:ただちに4の胸骨圧迫へ。
4 胸骨圧迫から心肺蘇生を始める
成人では胸骨の下半分を、約5cm沈む深さ・毎分100〜120回を目安に圧迫。胸を十分戻し、中断を少なくする。
人工呼吸の技能と意思があれば30回の圧迫と2回の人工呼吸。できない・ためらう場合も圧迫を続ける。小児・溺水などでは人工呼吸を組み合わせる意義が特に大きく、講習で学ぶ。
5 AEDが届いたら、案内に従う
電源を入れ、パッド等の図と音声に従う。パッドを貼る間も可能なかぎり圧迫を続ける。解析・ショック時は誰も触れない。
自動ショックの機種もある。機器の指示を聞き、離れたことを確認する。手順の細部は公式資料と実習で。
6 ショック後も、ショック不要でも再開
AEDの案内に従い、ただちに胸骨圧迫から再開し、救急隊と交代するまで続ける。
普段どおりの呼吸や目的のある動きが戻ればいったん中断して観察。迷う場合は継続。AEDの電源を切ったりパッドを外したりしない。
照合:救急蘇生法の指針2025 市民用・冊子p.20〜29、32〜37。原資料の最新情報は財団の掲載元から確認できます。
実演の台詞例|一回見せて、二回目に意味を確かめる
- 1 発見・安全
- 「人が倒れている。周りは安全かな」
周囲を見てから人形へ近づく。危険な場所なら自分の安全を優先し、無理に近づかない。
- 2 反応
- 「大丈夫ですか。分かりますか」
人形の肩を軽くたたき、呼び掛ける。ここでは反応がない設定と説明する。
- 3 協力を頼む
- 「誰か来てください。あなたは119番通報を。あなたはAEDをお願いします」
相手を指し示して具体的に頼み、頼まれた役は引き受けたことを返す。実発信はしない。
- 4 呼吸の判断
- 「胸とお腹の動きを見ます。この練習では、普段どおりの呼吸がない設定です」
胸・腹の動きを10秒以内に観察して判断する動きを示す。呼吸なし・異常・判断に迷う場合は、ただちに胸骨圧迫へ進む。
- 5 胸骨圧迫・AED
- 「胸骨圧迫を始めます。AEDが来たら知らせてください」
人形で手技を実演。AED役が訓練用機器を準備し、解析・ショック時は全員が離れたことを目で確認する。
- 6 再開と交代
- 「AEDの案内に従って、すぐ圧迫を再開します。交代をお願いします」
ショック不要でも蘇生不要ではない。中断をできるだけ短くし、救急隊へ引き継ぐ設定まで示す。
- 呼吸は、胸・腹の動きを10秒以内に観察して判断する。普段どおりの呼吸がない・異常・判断に迷う場合は、ただちに胸骨圧迫を開始する。
- 分からないときも119番の通信指令員に助言を求められる。「全部暗記していないと、何もしてはいけない」という授業にしない。
- カードありで一巡してから、見ないで試す。止まったときは、観察役が必要な一枚を指す。声の大きさや演技力の競争にしない。
観察役は、具体的な一か所を伝える
- 周囲の安全を確認したか。
- 119番とAEDを、相手を示して依頼できたか。
- 呼吸の判断を長引かせず、迷う場合の行動を説明できたか。
- 指導された胸骨圧迫と、AED解析・ショック時の離れる確認ができたか。
- 一か所の助言を受け、やり直せたか。
一巡したら役割を交代します。身体的な事情や心理的な負担に応じて、連絡・観察などの役割を選べます。実技の評価は指導した内容と実習の状況を踏まえ、暗唱や演技の巧さだけで決めません。
参考動画|消防庁|AEDの基本的な使い方
消防庁の既存公開動画はAED操作のイメージを補う資料。下の2025市民用指針と指導者の現行教材で手順を確認し、映像全体が2025対応に更新済みとは扱いません。
公式の掲載元は末尾の参考資料に記載。教師が事前に内容と使う場面を確かめ、必要な場面で止めて問い直します。全編再生確認や将来の再生を保証するものではありません。再生できない場合も、教科書と図解で進められます。
「知っている」を、条件に合わせて使う
訓練場面で、一人が人形のそばに、二人が近くにいる。
全員が人形のそばで次の指示を待つ。
追加で分かったこと
通報やAEDの準備をする役が決まっていない。
指導者の示範に沿い、通報・AED・胸骨圧迫等の役割を言葉で確認して交代する。
理由を一言で
具体的な依頼と交代で、救命につながる協力を学べる。
正解の言葉を当てるだけで終わらせず、図の一か所を指して理由を説明できるようにします。話しにくい場合は、矢印や短い文をノートへ足す方法で構いません。
実習を含む50分の授業例
| 時間 | 活動 | 教師の働き掛け・見取ること |
|---|---|---|
| 5分 | 先生の実演を通して見る | 成人が倒れた架空場面。人形・訓練用具を使い、生徒の体には手技を行わない。 |
| 8分 | 二回目を見ながら流れを板書 | 安全→反応→119番・AED→呼吸の判断→胸骨圧迫・AED。分岐と「迷うとき」を確かめる。 |
| 7分 | 指導者の示範 | 訓練用人形で圧迫の位置・姿勢・深さ・テンポ、AEDの安全確認を示す。 |
| 20分 | 役割を交代して実習 | 救助役・119番役・AED役・観察役。カードを見て一巡、次に見ないで試す。困ったら確認してやり直す。 |
| 6分 | 一か所を直して再試行 | 観察者の助言は具体的に一つ。全員の十分な反復に不足する場合は次時も実習する。 |
| 4分 | 最初の一歩を言葉に | 最初に何をするか、迷ったとき誰に助けを求めるかを書く。暗唱だけを技能の評価にしない。 |
50分は一例です。台数や人数に応じて複数時間へ分け、実際に試す時間と安全確認を確保してください。特に心肺蘇生の流れと技能実習は、別時間として扱う教科書もあります。用具・指導者が揃わない日は導入・確認までにとどめ、実習完了とはしません。
ノートに残すのは、絵・理由・次の一手
□ 絵のどこが、教科書の説明とつながるか。
□ 架空の場面に合う案と、その理由は何か。
□ 自分だけでは難しいとき、どんな支援を使えるか。
この時間で見取りたい姿
訓練場面で助けを求め、役割を分担し、指導された手順と安全確認を行える。視聴だけで技能の達成としない。
最初の答えと、資料を見た後の答えを並べ、何が加わったかを短く書きます。絵の巧さ、発言回数、実生活が理想に近いかを点数化するのではありません。
安心して学べる準備と配慮
生徒の胸を押したり、実物のAEDを体に装着して練習したりしません。胸骨圧迫は訓練用人形、電極パッドは訓練用機器で行います。119番への実発信はしないでください。体調や身体条件に応じ、観察・連絡などの役割でも学べます。
授業の前に養護教諭や関係する教職員と配慮・相談経路を確認し、個別の病状や家庭の事情は全体で共有させません。授業参加が難しい生徒には、別の架空事例や観察課題などの選択肢を準備します。
参考資料と確認範囲
- 文科省|中学校学習指導要領解説・保健体育編
- 消防庁|応急手当WEB講習・個別動画一覧
- 日本蘇生協議会|JRC蘇生ガイドライン2025
- 日本救急医療財団|救急蘇生法の指針2025 市民用(2026年9月10日更新版)
- 日本救急医療財団|市民用2025・訂正情報の掲載元
資料の掲載・構成・リンクを2026年11月4日に確認。動画は公式掲載元との対応を確認していますが、全編の再生・字幕の照合や、全端末での再生確認を済ませたという意味ではありません。最新の制度・指針・学校の方針は使用前に再確認してください。