- パス練習はできても、ゲームでシュートまでつながらない。
- 投げるのが得意な生徒ばかりが活躍してしまう。
- ボールに集まり、空いている場所を使えない。
近い距離で狙って投げる→仲間のパスを受けて打つ→守備を見て選ぶ。シュートの楽しさを入口に、パスとサポートの必要性が分かる授業へつなげます。
中学校のハンドボールを、シュート→パス・サポート→少人数ゲームの順に整理しました。公式動画、初回50分、8時間の単元例、つまずき別の声かけを、必要なところから選べます。
公式資料を参考に組み立てた授業案です。筆者の実施記録ではありません。以下の人数・時間・コート・簡易ルールは授業用の提案で、学校の環境と生徒の段階に合わせて調整します。
活動と動画を選ぶ|今日の課題はどこ?
中学1・2年では、空いている場所への移動と基本的なボール操作を結び付けます。3年では、仲間と連携して空間をつくる攻防へ。7人制を再現することより、全員が攻防を経験できる条件づくりが先です。学習指導要領解説・球技(ゴール型)
始める前に|柔らかい球・接触なし・回収の合図
軽くて握りやすい柔らかい教材用ボールを使い、無理なく届く位置から狙います。強い球を人に受けさせることを、入門の課題にしません。
| 確認すること | 授業前の準備 |
|---|---|
| ゴール | 転倒防止の固定、破損、ネットを確認。ぶら下がらない。固定できないゴールは使わず、安全な標的に変更する。 |
| 床・周囲 | 滑り、障害物、壁との距離、隣の活動との間隔を確認。投球が他の組の走路を横切らない配置にする。 |
| 投げる・待つ・拾う | 一つのゴールに一度に投げるのは一人。次の人は投げ手の後方の待機線で待つ。全員が投げるのを止めてから、合図で回収。 |
| 接触 | 押す・つかむ・たたく・体当たりは禁止。持っている球を手から奪わず、パスコースを守る。空中の相手に触れない。 |
| 体調・用具 | 肩・肘・手首・指の痛み、靴、爪、装飾品を確認。投球を連続させすぎず、休息と給水を入れる。 |
ゴール前にはシュート位置の目安と立入禁止のゴールエリアを示します。入門のゲームでは全員エリア外でプレーし、エリア内への飛び込みも扱いません。後でジャンプシュートへ進む場合は、着地する場所と周囲の安全を別に確認します。
① シュート|「強く」より「狙って入った」
近い位置から、ゴールの左右など大きな目標を狙います。教師が「どこを狙ったか」を伝えて示範し、まず一人ずつ試す。届かなければ距離を短くし、球の大きさや重さを変えます。
狙う場所を見て投げる。まずゴールの枠内へ。
投げる腕と反対の足を踏み出し、体の動きと合わせる。
受ける→ゴールを見る→狙って投げる。急がせない。
「速い球じゃなくていい。今は、狙ったところへ投げてみよう」
例えば3本ずつで交代し、観察する生徒は「狙った場所」と「実際に飛んだ場所」を伝えます。成功数は自分の変化を見る材料にし、強い球や遠い位置を一律に求めません。
ジャンプシュートは、基本が安定してから
踏み出して投げる動きが安定したら、守備なしで短い助走→踏み切り→投げる→安定した着地を確かめます。高く跳ぶ競争にはせず、まず無理なく着地できること。跳ばないシュートも使える選択肢として残します。
ハンドボールの魅力①|魅力・特徴編
日本ハンドボール協会
授業の入口に。どんな攻防で得点する競技かを確認する動画です。高度なプレーを、そのまま全員の到達目標にはしません。
リズムトレーニング|基礎編
日本ハンドボール協会
ウォーミングアップの参考。足のリズムを合わせる課題を選びます。シュートの技術解説とは別の動画です。
② パス|投げ方だけでなく、受け手の準備を見る
2人組で短い距離から始めます。両手で構えた相手へ、捕りやすい高さと強さで。片手で持ちにくい生徒には、小さめの柔らかい球や両手でのパスも認めます。
| 練習 | 進め方 | 見取るポイント |
|---|---|---|
| その場でパス | 向かい合い、相手の構えを見て投げる。捕ったら一度安定させる。 | 相手の顔へ強く投げていないか。受け手は球を見ているか。 |
| 動いて受ける | 受け手が横へ数歩動く→止まって構える→パス。慣れたらゆっくり動きながら受ける。 | 届く場所とタイミングを合わせられたか。 |
| パスからシュート | 横にいる仲間から受け、ゴールへ向き直ってシュート。役割を交代する。 | 受ける場所がゴールから遠すぎないか。受けた後に狙いを見ているか。 |
「相手が構えたのを見た? 相手が捕れたら、よいパスだね」
ドリブルも、短く確かめる
その場で低くつく→歩きながら→顔を上げて進む。球を一度持ち直した後に再びドリブルする動きは、競技では反則です。練習では短い距離に絞り、ゲームで運びたい場面と結び付けます。
③ サポート|パスを出したら、次に受けられる場所へ
「動こう」だけでは、球の近くに集まりがちです。ボールを持つ仲間と自分の間に、守備がいない場所へ動く。ボールとゴールの両方が見える向きをつくり、手や声で知らせます。
横へ開く守備味方C
横へ開く↖ ↗A・ボール
矢印はパスの候補。縮尺のない概念図です。守備が動けば、受ける場所も変えます。パスを出したAも、その場で止まらず次の支えになる位置へ。
3対1のパスゲームで「守備の陰から出る」
目安として5~6m四方程度の区画に攻撃3人と守備1人。近すぎず、無理なくパスが届く広さへ調整します。最初はドリブルなし。守備は体に触れず、投げられたパスを狙います。30~45秒程度で役割を替え、成功回数だけでなく出した後に受ける場所をつくれたかを見ます。
「今の場所から、ボールを持つ仲間が見える? 間に守備がいたら横へ出よう」
これはパスの出口を探す練習です。パス回しだけで終えず、次の2対1で「シュートのためにパスする」場面へつなぎます。
④ 少人数ゲーム|打てるなら打つ、守られたらつなぐ
小ゲーム:2対1でシュートへ
攻撃2人・守備1人・キーパーなしで、片側のゴールへ攻めます。横に幅を取り、ゴールエリアの外で受ける・投げる。シュート、守備の捕球、コート外への落球で1回の攻撃を終え、開始位置へ戻ります。反対方向への速攻はまだ入れません。
ゴールへの道が空いている
まずゴールを見て、無理なく届く場所からシュート。パスを決められた回数だけ回す必要はありません。
守備が自分の前に来た
守備を無理に押しのけず、空いた仲間へパス。受け手も、守備の陰から離れて受けます。
初期は守備の動く範囲を限定するか、ゆっくり動く条件から。慣れたら範囲を広げます。各自が攻撃・守備の両方を経験できるよう、攻撃1回ごとに交代します。
中ゲーム:3対2で、パスの選択肢を増やす
同じ片側コートで攻撃3人・守備2人、キーパーなし。左右に分かれて受ける場所をつくり、守備を見てシュートかパスを選びます。5人で役割を順送りにし、同じ生徒を守備に固定しません。
まとめのゲーム:4対4程度で、攻守を切り替える
安全な広さを確保できたら、両側にゴールを置くゲームへ。最初は4人全員がフィールドプレーヤーで、キーパーなし・ゴールエリア立入禁止の条件でも構いません。得点しやすければゴール幅などを調整し、すぐに人数を増やして密集させないようにします。
| 約束 | 授業用の簡易ルール例 |
|---|---|
| 得点と時間 | ゴール内に入れば1点。3分程度のゲーム→1分相談→再ゲーム。得点後は失点した側が中央から再開。 |
| ボールを持ったら | 基本は3歩・3秒以内を目安に判断。最初の練習では立ち止まって確かめる時間を設けてもよい。緩和する場合は全員へ明示する。 |
| ドリブル | 導入はなしでパスの出口を探す。慣れたらありに変更し、再ドリブルの扱いを確認する。一度に複数のルールを変えない。 |
| 守り方 | 接触なし。保持している球を奪わず、パスのカットと位置取りで守る。投球の腕をたたく・抱えることは禁止。 |
| ゴール前 | 最初は攻守ともエリア内へ入らない。入門段階ではエリア内へのジャンプ着地も認めない授業用ルールにする。 |
| 再開 | ライン外は相手のパスで再開。反則は教師が止め、相手のパスで再開。再開時は相手が3m離れるなど、方法を事前に統一する。 |
上表は競技規則をそのまま示したものではありません。3歩・3秒や再ドリブルなどの基本は協会の主なルール(アーカイブ)も参考にしつつ、正式な競技規則とは分けて扱います。公式戦の判定を説明する場合は最新の規則で確認してください。
柔らかい球、投球の強さ、シュート距離、構えと避け方の指導、教師の監督体制が整ってから。怖がる生徒へ強制せず、顔面を狙う投球や至近距離からの強投を認めません。条件が整わなければキーパーなしを続けます。
公式動画一覧|ゲームの形を見て確かめる
下の3本はスポーツ庁の小学校中学年向け資料です。中学生の初心者が易しいゲームを確認するときにも使えますが、年齢区分を読み替えず、中学校では守備を見た選択と仲間のサポートを深めます。
易しいゲーム|攻撃を有利にする
スポーツ庁/小学校中学年
攻守を分けて取り組むゲームのイメージを確認。動画の人数・キーパー配置と、本記事の2対1・3対2は異なります。
ゲームの行い方|規則を工夫する
スポーツ庁/小学校中学年
人数や用具などの条件を考える参考。動画のルールをそのまま採用せず、学級の安全条件に合わせます。
簡単な作戦|受ける位置を変える
スポーツ庁/小学校中学年
ボールを持たないときの位置を考える参考。見た後に、次のゲームで試すことを一つ決めます。
掲載元:小学校体育指導の手引・ゴール型ゲーム。動画は資料中のリンク先を埋め込んで紹介しています。
発展・教師の教材研究|1対1、2対2
以下は日本ハンドボール協会の競技向けスキル講座です。生徒全員に動作の再現を求めるのではなく、教師が攻防の見方を広げる資料として。競技での接触を、上の「接触なし」の授業へ持ち込まないようにします。
オフェンス編|1対1
日本ハンドボール協会
守備者との関係を見る発展資料。入門では、まず守備なし→人数を有利にした攻撃を十分に経験します。
2対2|ポスト無し
日本ハンドボール協会
仲間と組み合わせて攻める場面を考える参考。生徒への問いは「どこに空間ができた?」など一つに絞ります。
初回50分の例|シュートの成功から、仲間とつなぐ
| 時間 | 活動 | 教師が見るところ |
|---|---|---|
| 0~8分 | 健康観察・場の確認・準備運動 | 固定、投球方向、待機線、回収の合図を確認。 |
| 8~18分 | 示範→キーパーなしのシュート | 全員が試す。強さより、届く距離と狙いを調整。 |
| 18~27分 | 2人組のパス→受けてシュート | 相手の準備と、受ける場所。 |
| 27~40分 | 2対1の小ゲーム | 打てる位置か、仲間へつなぐかを選ぶ。 |
| 40~45分 | 一つ助言→もう一度 | 「受ける位置を横に」など一つ変える。 |
| 45~50分 | 片付け・振り返り | シュートにつながった動きを一言残す。 |
初回に無理にゲームまで進めず、投球・捕球や安全確認に時間が必要なら次時へ回します。コート数は教師が安全に見渡せる範囲に限定します。
8時間の単元例|練習とゲームを行き来する
| 時 | 主な活動 | 学習の焦点 |
|---|---|---|
| 1 | シュート→パスからシュート→2対1 | 得点する感覚と安全な動き。 |
| 2 | パス・捕球・短いドリブル→2対1 | 扱いやすい球、距離、速さを見付ける。 |
| 3 | 3対1のパスゲーム→2対1 | 守備の陰から出て受ける。 |
| 4 | 3対2のハーフコートゲーム | 横幅を使い、空いた仲間を選ぶ。 |
| 5 | 4対4程度の簡易ゲーム | 攻守の切替と基本ルール。 |
| 6 | 課題別練習→ゲーム | 打つ場所、パスの出口、戻る位置を修正。 |
| 7 | チームで一つ作戦→再ゲーム | 同じ相手に工夫を試し、結果を比べる。 |
| 8 | 交流ゲーム・まとめ | 得点につながった動きと助言を振り返る。 |
8時間は配当の指定ではなく一例です。1・2年は空いた場所への移動と基本操作、3年は仲間の動きに合わせて空間をつくることへ。シュート数・得点だけでなく、判断、助言、安全な行動も見取ります。
うまくいかないとき|条件を一つ戻す
| 様子 | 手立て | 声かけ |
|---|---|---|
| 球が届かない | 近い位置・軽い球・小さな目標ではなく大きな枠へ | 「まず枠の中へ届く場所でやろう」 |
| 捕るのが怖い | 柔らかい球、短い距離、ゆっくりしたパスへ | 「構えたのを見てから投げよう」 |
| 球を持つと止まる | 守備なしで受けてシュートへ戻す | 「最初にゴールを見よう」 |
| 全員が球に集まる | 左右に目印を置き、幅を取る場所を示す | 「近づくより、パスが通る場所は?」 |
| 無理なシュートが続く | 2対1へ戻り、守備の位置を確認 | 「守られたとき、空いていたのは誰?」 |
| 経験者だけが打つ | 短い攻撃ごとに役割交代。受ける場所を全員で相談 | 「仲間が打てたパスや動きも見つけよう」 |
授業で使える|5つの確認カード
□ 狙ってシュート
□ 捕りやすいパス
□ 受ける場所
一つ直すこと:__
球・距離:__
練習人数:__
難しいときの戻り方:__
□ 接触しない
□ ゴール前の人を確認
□ 回収は合図で
□ 痛みはすぐ伝える
よかった動き:__
次に試すこと:__
□ パス後の動きも見る
□ 助言は一つ
得点につながった工夫:__
変えてどうなった:__
次の課題:__
教材研究に役立つ参考書
酒巻清治監修『ハンドボール 基本と戦術』(実業之日本社)。シュート、パス、フェイント、コンビネーションなどを扱う競技の技術書です。授業案集ではありませんが、示範や動きの説明を深める参考になります。
2016年刊。最新規則の確認用ではなく、技能や戦術の背景を調べる一冊として。接触や高度な技術は、学校の授業にそのまま取り入れません。
体育.netの書籍一覧を「球技・ボール運動」で絞り込み、ハンドボールやゴール型の指導書を探せます。
次の授業準備に|中学校の授業実践パック
配布用の練習表や、編集できる資料を用意したい先生へ。柔道・バレーボール・ダンスでは、授業で使える教材パックをご用意しています。
柔道|授業実践パック技能練習表・Word・教師用ガイド内容・価格を見る →
バレーボール|授業実践パック技能練習表・学習記録・Word内容・価格を見る →
ダンス|授業実践パック構成表・評価シート・Excel内容・価格を見る →3教材はそれぞれ別売りです。
参考資料
- 中学校学習指導要領解説 保健体育編:ゴール型の学習内容。
- スポーツ庁・スポトレ動画ナビ(ハンドボール):協会動画の案内。
- 小学校体育指導の手引・ゴール型ゲーム「ハンドボールを基にした易しいゲーム」:小学校中学年向け。初心者の導入を考える資料。
- 日本ハンドボール協会・スキルアップ講座:競技向けの発展資料。
- 実業之日本社『ハンドボール 基本と戦術』:書誌と目次。
リンク・資料確認:2026年9月15日。動画は配信元のプレーヤーで紹介し、再配布していません。