- 「自由に踊って」と言うと、生徒の動きが止まってしまう。
- 振り付けを覚えるだけで、工夫する時間がなくなる。
- 得意・不得意の差があり、何を評価するか迷う。
まねる→一つ変える→仲間と踊る。難しいステップを増やす前に、全身でリズムに乗る楽しさと、動きを変える手がかりをつくります。
中学校の「現代的なリズムのダンス」を、活動8例と公式動画4本から選べるように整理しました。初回50分、6時間の単元例、声かけ、確認カードまで、必要なところから使えます。
公式資料を参考にした授業用の提案です。筆者の実施記録ではありません。活動名・時間・人数は学級に応じて調整してください。
今日の授業に使う|活動・動画の入口
目指すのは「振り付けの再現」だけではない
中学1・2年は、リズムの特徴をつかみ、動きに変化を付けて全身で踊ることが中心です。ロックでは弾み、ヒップホップでは体の上下の動きにも着目します。3年では、変化に加えてまとまりを工夫する学習へ広げます。
手本をまねることは入口になります。その後に「大きさを変える」「相手と合わせる」など、生徒自身が選べる時間を。8カウントは助けになりますが、数えることが目的にならないよう、音を聞いて踊る時間も残します。学習指導要領解説・ダンスの項
易しい動きで体を動かす。
大きさ・向き・高さ・止まり方。
合わせる・返す・違いを楽しむ。
公式動画①②|ロックのリズムで弾む
中学校向けの教師用動画です。まず教師が授業の進め方を確認し、生徒に見せるときは短い場面と見る観点を選びます。動画を通して見るだけで終わらず、すぐ同じリズムで動く時間へ。
ロックのリズム①
スポーツ庁/中学校向け教師用資料
見る観点:「足だけでなく、体のどこが動いている?」。見た後は、その場の小さな弾みから試します。
ロックのリズム②
スポーツ庁/中学校向け教師用資料
見る観点:「動きや、仲間との関わりにどんな変化がある?」。気付いた工夫を一つ選んで試します。
公式動画③④|ヒップホップの縦のりを参考に
こちらは高等学校向けの教師用資料です。中学校の内容をそのまま示す動画ではありません。教師の教材研究として確認し、中学生には難しい組合せを求めず、易しいリズムの取り方を選んで紹介します。
ヒップホップのリズム①
スポーツ庁/高等学校向け教師用資料
見る観点:「音のアクセントと、体の上下はどうつながる?」。中学校では、無理のない小さな上下動から。
ヒップホップのリズム②
スポーツ庁/高等学校向け教師用資料
見る観点:「同じリズムの中で、どんな変化を付けられる?」。全員が複雑な振り付けを再現する課題にはしません。
4本ともスポーツ庁の教師用指導資料に掲載されています。感染症対策を背景に制作された動画です。本記事では動きや指導の工夫を参考にし、当時の感染症対応を現在の一律の基準として示すものではありません。
すぐ試せる|動きの引き出し8例
以下は記事用の活動例で、動画の実演をそのまま書き起こしたものではありません。1時間ですべて行う必要はなく、2~3例を選び、踊り直す時間を確保します。
1.音を拾う
その場で足踏みし、手拍子を重ねる。次に手を休め、体でも拍を感じる。
「手を止めても、体は音に乗っている?」
易しくする:足踏みだけ、上半身だけでも参加できる。
2.弾んで歩く
膝を固めず、小さく弾む。その場→前後や横へ2、3歩と動く。
「同じ動きでも、音が変わると感じは変わる?」
易しくする:跳び続けず、かかとや膝の小さな動きから。
3.まねして交代
2人が同じ方向を向き、横に並ぶ。片方の簡単な動きをもう一人がまねし、短く交代。
「相手がまねできる動きにしてみよう」
易しくする:足踏み+腕一つから。難しい技の披露会にしない。
4.大きさを変える
同じ横ステップを、小さく→大きく。移動距離ではなく腕や体の広がりも変える。
「場所を広く使わなくても、大きく見せられる?」
易しくする:まず腕の振り幅だけ変える。
5.高さ・向きを変える
同じ動きを、少し低い姿勢/普段の高さ、正面/斜めで試す。
「どの変化が、音の感じに合っていた?」
易しくする:深くしゃがむ、急にひねる動きを求めない。
6.動く・止まる
弾む動きの途中に短いストップを入れ、また音に戻る。
「止まった後も、音を聞いて再開しよう」
易しくする:足踏み→1拍止まる程度から。
7.合わせる・返す
向かい合ったペアで一緒に動く。次に片方の短い動きを相手が返す。
「同時に踊る感じと、返す感じはどう違う?」
易しくする:左右を厳密にそろえず、リズムのやり取りを楽しむ。
8.選んでつなぐ
4人程度で好きな動きを二つ選ぶ。全員で合わせる部分と、一人ずつ変える部分を試す。
「足の動きは同じでも、どこを変えられる?」
易しくする:構成を紙に書く前に、実際に動いて決める。
グループ活動|最初から「1曲つくって」にしない
4人程度で、全員が動ける短い部分から始めます。机上で振り付けを決め続けるより、踊る→相談する→また踊る、を短く繰り返す形にします。
| 段階 | 課題の例 | 声かけ |
|---|---|---|
| 選ぶ | 全員で試した動きから、二つ選ぶ。 | 「全員ができて、変えられそうな動きは?」 |
| 変える | 一つは一緒に、もう一つは向きや腕を変える。 | 「足は同じで、上半身を変えてみよう」 |
| つなぐ | 8カウント×2程度を手がかりに試す。音楽の区切りに合わせ、長さは調整。 | 「数えなくても、音でつながるかな?」 |
| 見せ合う | 2グループで短く交流し、よかった工夫を一つ返す。 | 「そろったかだけでなく、変化したところを見よう」 |
| 踊り直す | 助言を一つ採用し、もう一度踊る。 | 「何を変えると、もっと気持ちよく踊れる?」 |
中学1・2年では、完成作品の長さや難しさを競うより、リズムに乗ること、動きを工夫すること、仲間と関わることを大切にします。3年では、生徒の経験に応じて始め方・終わり方や全体のまとまりへ広げます。
エアロビクスの足の動きを共通の材料にすれば、グループは「手をどう動かす?」「どの隊形にする?」から工夫できます。教師が完成した振り付けを一曲分つくるのではなく、生徒が選び、組み合わせて作品にしていく進め方です。
石井の実践では、共通曲の構成例と、生徒が曲を選ぶ白紙の構成表を使い分けていました。授業の流れや実際に使った曲は、無料の実践記事で確認できます。
初回50分|「これなら踊れる」をつくる
| 時間 | 活動 | 教師が見ること |
|---|---|---|
| 0~8分 | 健康観察・間隔の確認・準備運動 | 床、靴、装飾品、体調を確認。小さい動きから始める。 |
| 8~15分 | 全員で足踏み、弾み、横ステップ | 教師と同じ方向を向く配置。間違いを止めて直しすぎない。 |
| 15~20分 | ロックの動画の一部を見る→試す | 見る観点は「体の弾み」一つ。視聴は短く。 |
| 20~30分 | 2人でまねして交代 | どちらも動きを出す。苦手なら共通の動きから選ぶ。 |
| 30~40分 | 大きさ・向き・ストップから一つ変更 | 一度にたくさん変えない。変化を教師が具体的に認める。 |
| 40~46分 | 近くのペアと見せ合う→踊り直す | 一人ずつ前へ出す形を急がない。 |
| 46~50分 | 整理運動・一言記録 | 「変えたこと/踊りやすかったこと」を残す。 |
6時間の単元例|踊る時間を毎回確保する
授業時数を定めたものではなく、一つのモデルです。学年・既習経験・年間計画に合わせて増減します。
| 時 | 主な学習 | 振り返りの問い |
|---|---|---|
| 1 | 簡単な動きで音に乗る。ペアでまねる。 | どの動きなら音に乗りやすかった? |
| 2 | ロックの弾み。大きさやストップを変える。 | どこを変えると印象が変わった? |
| 3 | ヒップホップの縦のり。曲による違いを試す。 | 音と体の動きにどんな違いがあった? |
| 4 | 仲間と合わせる・返す。短くつなぐ。 | 相手が踊りやすくなる工夫は? |
| 5 | グループで工夫し、交流して踊り直す。 | 助言を受けて何を変えた? |
| 6 | 短い発表・交流。気に入った動きをみんなで試す。 | 自分や仲間に見つけたよさは? |
止まってしまったとき|条件を一つ易しくする
| 困っている様子 | 戻すところ | 声かけ |
|---|---|---|
| 何をすればよいか分からない | 足踏み・横ステップの二択にする。 | 「まず一つ選んで、一緒にやろう」 |
| 手足がばらばらになる | 足を繰り返し、腕は自然な振りから。 | 「足だけで音に乗れたら、腕を足そう」 |
| カウントに追われる | 動きを減らし、同じ動きを繰り返す。 | 「数より音を聞いて、続けてみよう」 |
| 恥ずかしくて動けない | 全員同時、横並びのペア、小さい動きから。 | 「今は見せる時間ではなく、試す時間だよ」 |
| 得意な人だけで決める | 一人一つ提案し、全員で試して選ぶ。 | 「みんなが入れる動きに変えられる?」 |
| 記録や相談ばかりになる | 話合いは短く区切り、すぐ動いて確かめる。 | 「一度踊ってから、決めよう」 |
授業で使える|5つの確認カード
□ 音に乗る
□ 動きを変える
□ 仲間と関わる
今日は__を試す。
□ 足踏みから
□ 動きを二つつなぐ
□ 一つ変化を付ける
難しければ簡単な動きへ戻る。
□ ぶつからない間隔
□ 床・靴・体調
□ 無理な技をしない
痛みや不調は先生へ。
□ 音と動き
□ 大きさ・向きの変化
□ 合わせる・返す
よかったのは__。
今日変えたのは__。
やってみると__。
次は__を試したい。
評価は「目立つ」「笑顔」「難しい技ができる」だけで決めません。リズムに応じた動き、変化の工夫と伝え方、仲間の違いを認める姿や安全への配慮を、練習・交流・記録から見取ります。発表の一回だけで判断しないようにします。
教師の準備|曲・場所・安心して踊れる約束
- 曲は拍が聞き取りやすく、生徒が無理なく動けるものから。曲の速さだけで上級・初級を決めず、動きを減らす方法も用意します。
- 教師は授業前に選んだ曲で短く試し、再生・停止位置と音量を確認。合図や声が届く音量にします。
- 腕を広げたり移動したりしても接触しない間隔を確保。荷物・コードを活動場所から除き、床と靴の滑りを確認します。
- 頭や首を支点にする技、倒立、投げ上げや人を持ち上げる動きは、この入門案では扱いません。急な反り・深いしゃがみ・強いひねりも無理に求めません。
- 不調時は中止して教師に知らせる。休息・給水を取り、健康状態に応じて座位での上半身の動きなども相談します。
- 人の動きを笑わない、無断で撮影・投稿しない。経験者を固定の指導役にせず、全員が踊る・提案する機会をつくります。
資料で指導の全体像を確認する
文部科学省の中学校向けダンス・リーフレットには、リズムや動き、授業づくりの考え方が図入りで整理されています。2011年の旧課程資料なので、現在の目標・評価は上記の現行解説と照合します。
基本ステップから作品をつくる実践も見たい先生へ
既存の実践記事では、基本ステップに手の動きや隊形を加え、学習カードを使って作品づくりを進める方法を紹介しています。今回の「リズムに乗って動きを変える」入門案と、ねらいに合わせて使い分けられます。
教材研究に役立つ参考書
村田芳子編著『最新楽しいリズムダンス・現代的なリズムのダンス』(小学館)。リズムダンスの考え方と授業例、小学校から中・高校へのつながりを扱う一冊です。
2002年刊です。「最新」は書名の一部で、2026年の最新版という意味ではありません。指導要領・評価は現行資料で確認し、在庫・版・商品状態は購入先で確認してください。
書籍一覧を「表現・ダンス」で絞り込めます。対象学年や内容を確かめながら、今の授業に合う一冊を探せます。
エアロビクスで作品づくり|編集できるダンス教材
授業で使うカードを、
編集して、そのまま配布。
足のステップを学び、手の振り付けや隊形を工夫するエアロビクスの実践用教材です。進め方の見通しを持たせたい先生へ。
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基本ステップ表
共通の「足の動き」を選ぶ
基本ステップを確認し、授業で扱う動きを選びます。図・メモの欄は空欄なので、必要なポイントを書き込めます。
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ルーティン構成表
手の動き・隊形を組み立てる
ステップと隊形を並べ、踊って確かめながら直すための表。共通曲の例と白紙版を収録しています。
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発表評価シート
仲間のよさを言葉にする
発表を見る観点を共有し、作品のよさを伝え合います。発表会の進行表もセットにしています。
基本ステップ表/白紙の構成表/共通曲の構成例/発表評価シート/進行表
編集用Excel+印刷用PDF。5種類の教材を収録しています。
画像はレイアウト見本です。基本ステップ表の図・メモ欄は空欄で、完成した足跡イラスト集ではありません。音源・歌詞・掲載の公式動画は含みません。
780円(税込)・買い切り
ほかの単元の授業準備には、柔道の授業実践パック・バレーボールの授業実践パックもあります。それぞれ別売りです。
参考資料
- 文部科学省・中学校学習指導要領解説 保健体育編:ダンス、学年別のねらい。
- スポーツ庁・教師用指導資料:ロック2本、ヒップホップ2本。
- 文部科学省・中学校向けダンスリーフレット(2011年):旧課程の参考資料。
- 国立国会図書館・参考書の書誌情報
資料・リンク確認:2026年9月15日。