足の基本ステップは教師が教え、手の振り付けや隊形は生徒が考える。
教師が完成したダンスをすべて振り付けなくても、踊りの材料と構成の枠があれば、グループで作品づくりを進められます。私が中学校で実践した、エアロビクスの基本ステップを使う授業を紹介します。
音楽に合わせて基本ステップを練習。表を見て使いたい動きを選びます。
構成表を囲んで相談。手の動き、隊形、ポーズを試してつなぎます。
評価カードを使って仲間の工夫を発見。コメントで良さを伝えます。
エアロビクスそのものは体つくり運動にも位置付けられます。本記事は、その基本ステップをダンスの作品づくりの材料にした実践です。ダンス領域で扱う際は、現代的なリズムのダンスのねらいに沿い、曲に乗って全身で動き、仲間と動きを工夫することを大切にします。文部科学省・中学校学習指導要領解説 保健体育編
単元の見通し:足の動きから、グループの作品へ
取り入れる際の6時間の構成例です。時数を固定せず、基本ステップや作品づくりに時間が必要なら、練習の時間を増やします。
| 時間 | 主な活動 | 生徒が考えること |
|---|---|---|
| 1 | 前半は全体で基本ステップ。慣れたら手の動きを試し、グループ活動の見通しを持つ | 同じ足の動きに、どんな手を付けられる? |
| 2 | 曲と構成の条件を確認。構成表を使ってステップや隊形を選ぶ | どんな作品にしたい? |
| 3・4 | 踊りながら相談し、手の振り付け・隊形移動・ポーズをつなぐ | 動きを変えると、どう見える? |
| 5 | 通して踊り、仲間に見てもらって修正する | そろえるところ・工夫を見せるところは? |
| 6 | 発表会と振り返り。評価カードで良さを伝える | どんな工夫が伝わった? |
授業の始まりは、みんなでステップ
グループ練習の前に、全体で基本ステップを復習する時間があると始めやすくなります。できれば作品づくりの課題曲とは別の練習曲を使い、音楽に乗って動きます。私が練習に使った曲は後半の曲紹介にまとめています。
教師が難しい合図を次々に出す必要はありません。「まずマーチ」「次はステップタッチ」など、少ない種類をゆっくり切り替えるところから始められます。ここでも完成した手の振り付けを覚えさせるのではなく、足の動きを確かめることを中心にします。
共通曲と自由曲、2つの進め方
| 比較 | 教師が共通曲を用意 | グループで選曲 |
|---|---|---|
| 教師の準備 | 曲、使う範囲、構成の枠 | 時間の上限、選曲・提出ルール |
| 生徒の工夫 | ステップ、手、隊形、ポーズ | 選曲から全体の構成まで |
| 特徴 | 迷う部分を減らし、同じ音楽で練習できる | 好きな曲で取り組めるが、音楽準備や構成の支援も必要 |
好きな曲を選んだ年は、熱量が大きかった
最初の年は6グループほどに分け、生徒が曲と使う区間を選びました。使用時間に条件を設け、基本ステップを学んだ後は、手の動きや隊形をグループで工夫しました。
自分たちが踊りたい曲だからこその盛り上がりがありました。一方で、構成を決めるのに苦労するグループもいました。最後の授業では、人気のあったグループの踊りをみんなで踊り、一体感のある締めくくりになりました。
翌年は、曲と構成の枠を用意した
複数の曲を準備する負担もあったため、次の年はロック調の「どんなときも。」を共通曲にしました。構成表に隊形移動、ステップ、決めポーズ、フリーパートを用意すると、同じ曲でもグループごとに違う作品ができました。ほかの先生にも取り入れてもらった方法です。
初めてなら共通曲で枠を示し、経験を積んだら選曲から任せる方法も考えられます。例えば中1では枠を多めに、中3では自由度を高くするなど、生徒の経験に合わせます。
基本ステップを動画で確認する
最初はあえて手の振り付けを入れず、足の運びを覚えます。腕は動きやすく自然に使い、動画に手の動きがあっても、まずは足に注目します。
足の動きに慣れたら、「このステップに、どんな手の動きを付けられる?」と問いかけます。教師が腕を上げる・横に広げるなどの例を見せることもありますが、正解としてまねさせるためではありません。「こんな動きもあるよ。ほかにもいろいろ考えられるね」と、生徒の工夫につなげます。
まずは6つの基本ステップ
出典:日本エアロビック連盟。私の15ステップ表と同じ一覧ではありません。YouTubeで見る
ステップのバリエーション
Vステップなど、基本から発展する動きの参考です。YouTubeで見る / 日本エアロビック連盟の学校体育向けページ
基本ステップ表は、動きを思い出す手がかりに

当時の表には、マーチ、ジョグ、ステップタッチ、ニーアップ、キック、ジャンピングジャック、グレープバインステップ、レッグカール、Aステップ、Vステップ、ボックスステップ、マンボステップ、ジャンピング、ヒールタッチ、トータッチを載せていました。全部を作品に入れるのではなく、この中から動きを選びます。
15種類は、必ず覚える数ではありません。選ぶステップが各グループで偏らず、発表にバリエーションが生まれるように、動きの選択肢を用意したものです。生徒の経験や時間に合わせて10種類に絞ったり、20種類へ増やしたりして構いません。
ステップ名の横に、生徒が簡単な絵を描くこともしていました。ただ、教わりながら描く時間を取るのは難しい面もあります。記入を必須にせず、まず動く時間を優先します。基本ステップ表は「動きを振り返って選ぶため」、構成表は「グループで相談して書き込むため」と使い分けます。
足の運びを図で確かめたい場合は、「フィットネスの勧め」のAステップ解説も参考になります。動きを順に示した図とカウント別の説明があります。手の動きは一例として扱い、まず足に注目します。販売中の基本ステップ表は、ステップ名と動きの記入欄を備えた形式です。足跡図や棒人間の完成イラスト集ではありません。
構成表を使って作品をつくる
ルーティンの構成表は、教師だけが持つ進行表ではありません。生徒自身が見ながら相談し、実際に踊って直すための学習カードです。

8カウントを目安に、動きをつなぐ
8カウントは音楽の拍を1〜8と数えたまとまりです。「8カウント×2」なら16拍。構成表の同じ行を見ると、今どこを練習しているかをグループで共有できます。数えることだけに集中せず、慣れたら音楽を聴いて全身でリズムに乗ります。
| 構成表の部分 | 生徒が決めること | 声かけの例 |
|---|---|---|
| 移動Jog → 隊形A | 並び方・名前・道順 | 「誰がどこを通る?」 |
| ステップ① | 足のステップ・手の動き | 「手を変えるとどう見える?」 |
| 決めポーズ | 形・向き・タイミング | 「音の区切りで止まろう」 |
| フリーパート | グループで見せたい動き | 「自分たちらしさを出そう」 |
声かけは、この実践を取り入れる際の例です。
少ない動きでも、工夫で作品になる
「隊形を3つ、ステップを3種類以上」などの目安があると、何を考えるかがはっきりします。元の共通曲構成表には隊形A〜F、ステップ①〜⑥の欄がありますが、すべて違うものにする必要はありません。教師が扱う範囲と条件を決めます。
同じ足の動きでも、腕を上げる・横に広げる・向きを変えると印象が変わります。困っているグループには、まず1つのステップに手を付けるところから促します。
曲の区切りはポーズ、移動は安全に
8カウントの繰り返しだけでは扱いにくい部分は、決めポーズにしていました。無理に動きを詰め込まず、音のアクセントを見せ場にします。隊形移動は軽いジョグや足踏みでリズムを保ち、まずゆっくり道順を確認します。グループ間の間隔も取り、ぶつからないようにしてから音楽に合わせます。
評価カードと発表会

発表会では司会・音楽・ビデオの係を設け、グループがテーマと見どころを紹介してから踊りました。当時の進行用紙では、紹介は1分以内、発表後の評価シート記入は2分を目安にしていました。
見る生徒にはカードを渡し、動きの大きさ、一体感、隊形の工夫、音楽とのタイミングなどに注目してもらいました。ABCだけで終わらず、「どの場面が良かったか」をコメントに残すと、発表した仲間に伝わります。
相互評価は、仲間の工夫を見つけるためのもの。人気やAの数をそのまま個人の成績にするわけではありません。私は発表の映像に加え、普段の練習の様子も見ていました。
全員で一つのグループの作品を踊って締めくくる方法もあります。選ばれなかった作品の良さも紹介し、それぞれの工夫を認め合える時間にしたいところです。
実際に使った曲と準備
基本ステップの練習と作品づくりで曲を使い分けました。「ゆっくり」「速め」は、私の授業での練習用途です。生徒の動きや拍の取り方に合わせて調整してください。
スコット・マーフィー
「どんなときも。」
曲を確認する
収録CDの情報を確認する
『Guilty Pleasures 3』(UPCH-1634)。在庫・配信状況は変わります。教材に音源は含まれません。
Gummibär
「The Gummy Bear Song」
曲を確認する
Vengaboys
「Boom, Boom, Boom, Boom!!」
曲を確認する
エアロビクスメドレーの再生リストも参考候補です。こちらは授業で使ったものではなく、後から見つけたものです。各動画の内容を確認してから利用してください。
- 拍が取りやすく、動きを切り替える余裕がある曲を選ぶ。
- 歌詞や内容が学校の授業に適しているか確認する。
- 使う時間と開始・終了位置を決める。
- 同じ曲名でも歌手・アレンジ・収録版を確認し、構成表と照合する。
- 再生機器・音量・音源が途切れず再生できるかを授業前に確認する。
学校の授業での音楽利用と、音源・歌詞・音楽入り動画の一般公開や販売は扱いが異なります。JASRACの学校利用案内。生徒の映像は学校の撮影・保存・公開ルールに沿って扱います。
学習カードを授業準備に生かす
基本ステップを選ぶ表、グループで書き込む構成表、発表を見る評価カード。それぞれの役割を分けると、生徒も教師も次に何をするかを共有しやすくなります。
中学校ダンス|授業実践パック
ステップを覚える、構成を考える、発表を振り返る。
授業で使う5種類の用紙を、ひとまとめに。
基本ステップ表
ルーティン構成表
発表評価シート
780円(税込)
印刷して使うPDFと、学校の時数・グループに合わせて直せるExcelを収録しています。
受け取れる5種類の教材
- 基本ステップ表
- 白紙のルーティン構成表
- 「どんなときも。」の構成例(表・裏)
- 発表評価シート
- 発表会の進行表
買い切り教材です。音源・歌詞・完成した足跡イラスト集は含まれません。
次の授業準備に|中学校の授業実践パック
生徒に配る練習表や、学校に合わせて編集できる資料を用意したい先生へ。体育.netの有料教材は、次の3種目です。
柔道|授業実践パック技の順序を共有する技能練習表と、授業運営の教師用ガイド。PDF・編集用Word教材の内容・価格を見る →
バレーボール|授業実践パックアタックから三段攻撃へ。技能練習表と学習記録を授業に。PDF・編集用Word教材の内容・価格を見る →
ダンス|授業実践パック基本ステップ表、構成表、評価シートでグループの作品づくりを支援。PDF・編集用Excel教材の内容・価格を見る →3教材はそれぞれ別売りです。内容・形式・価格を各販売ページで確認できます。