- 泳げる生徒と、水に顔をつけるのが苦手な生徒の差が大きい。
- 「もっと泳ごう」以外の練習や声かけが見つからない。
- 泳法の見本と、つまずきに合う図解をすぐに見せたい。
呼吸・浮く姿勢・手足のタイミング。短く試し、確かめて、もう一度。水慣れから4泳法まで、授業で使う資料を目的別に探せるようにしました。
- 中学校向け公式動画3本と、泳法・水中スタートの図解
- 苦手な生徒が戻れる練習と、泳げる生徒の課題
- 初回50分・8時間の単元案・授業用の確認カード
以下は公式資料をもとにした授業案です。学校の年間計画・泳力・指導体制に合わせて調整してください。4泳法を全員に一度に習得させる計画ではありません。
スタートは水中から。水深、指導・監視の分担、救急対応を事前に確認し、実施できる安全条件を整えてから活動を選びます。スポーツ庁・2026年度の通知
今日の課題から選ぶ|練習・図解の入口
中学1・2年では、クロールまたは平泳ぎを含む2泳法を選んで履修できるようにします。3年では複数泳法やリレーへつなぎます。ここでは、組み立てやすいクロール+平泳ぎを単元例の中心にしています。学習指導要領解説・水泳
中学校の公式動画|授業の場面から選ぶ
3本ともスポーツ庁の教師向け資料です。感染症対策を背景に制作されたため、当時の対策をそのまま現在の必須ルールとはせず、活動や指導の工夫を参考にします。4泳法それぞれの専用実演動画ではありません。
入水前後の活動
入退水の段取りや授業の進め方を確認したいときに。
水慣れの活動
泳法の前に、安心して水に関われる活動を考えるときに。
泳法の学習
泳法の課題や、指導の工夫を確認したいときに。
写真・図解を一望する|見たい泳ぎへ
まず全体の動きを見て、練習では一部分に絞ります。画像を選ぶと、このページの該当箇所へ進みます。
出典:文部科学省「水泳指導の手引(三訂版)」2014年。各図の出典ページは下に記載しています。旧課程の資料のため、履修内容と安全上の取扱いは現行解説・最新通知を優先します。原資料にある飛び込みのページは、本記事の練習として扱いません。
水慣れ・浮く|「戻れる」ことを先に確かめる
水が怖い生徒には、いきなり25mを課しません。教師が直接見守れる、本人が安定して立てる水深・範囲で行います。「浮く」だけでなく足を底につけて立ち直るところまでを一つの学習にします。
① 自分で顔に水をつける
手で水をすくうところから。できれば口元、顔へと本人のペースで進め、短く息を吐いて顔を上げる。頭を押して沈めない。
「どこまでなら自分でできそう?」
② 壁の近くで、浮く→立つ
壁につかまるなど易しい条件から。教師が浮いた姿勢から立つ動きを示し、短く試す。立てる見通しがつくまで移動距離を伸ばさない。
「止めたいとき、どう戻る?」
③ け伸び→立つ
教師が許可した短い区間で、壁を蹴って姿勢を伸ばす。前方を空け、次の生徒は合図を待つ。距離より落ち着いて戻れることを確かめる。
「腕から足先まで、伸びた感じは?」
④ 呼吸をつないで、少し進む
息を吐く・吸う動きが落ち着いたら、補助具なども選びながら短い移動へ。苦しくなる前に休む。潜水距離や息止めを競わない。
「無理なく息を吸えたところで区切ろう」

動画で授業の工夫を見る:水慣れの活動へ →
クロール|呼吸で動きが止まるなら、短く戻る
体を伸ばして進む。
交互の動きを続ける。
体の回転に合わせて横へ。
腕を速く回すことだけに集中せず、呼吸を含めて動きが続くかを見ます。呼吸のたびに大きく前を向く生徒には、立った姿勢で腕と顔の向きを確認し、短い区間で試し直します。
キックを確かめる
壁や補助具を使い、姿勢と足の動きを確認。勢いよく水しぶきを上げることを目標にしない。
「姿勢を保ったまま、足を動かせる?」
手の動き+呼吸を合わせる
安全な陸上で動きを確認してから水中へ。一度に全部を直さず、今日は「呼吸の向き」など観点を一つにする。
「息を吸うとき、顔はどちらを向いた?」

平泳ぎ|「かく・呼吸・蹴る・伸びる」をつなぐ
手と足をただ同時に動かすのでなく、呼吸からキック、その後の伸びへとつなぎます。急いで繰り返す前に、蹴った後に進む感覚を確かめます。
足の裏で水を押す感覚
まず陸上で足の動きを確認し、壁や補助具を使ったキックへ。膝や足首を他人が強くひねって直さない。
「蹴った後、足をそろえて伸びられた?」
呼吸と伸びのタイミング
腕でかく→呼吸→手を前へ戻しながらキック→伸び、の流れをゆっくり確認。短く泳いでリズムを見る。
「蹴った後、すぐ次の手をかいていない?」

背泳ぎ|上向きで浮くことに慣れてから
背浮きに不安がある生徒は、教師の直接指導で補助具や支え方を選びます。腰を折りすぎず、リラックスした姿勢から交互のキック、腕の動きへ。進行方向が見えにくいので、壁までの距離・止まる場所・接触防止を先に決めます。
背浮き+キック
短い区間で姿勢を確認し、足の動きを加える。補助具は安全を保証するものではなく、監視を続ける。
「顔を水面に保ち、落ち着いて呼吸できた?」
腕の動きを加える
教師が示した範囲で、左右の腕を交互に動かす。泳げる距離より、姿勢とリズムが崩れない区間を選ぶ。
「止まる位置を、始める前に確かめた?」

バタフライ|短い動きの組合せから
両足を同時に動かすキックと、両腕のかき・呼吸のタイミングを合わせます。大きく反ることや、無理に長く泳ぐことを目標にしません。基礎が整い、安全に指導できる条件で取り上げます。
左右同時のキック
教師の示範を見て、動きを短く試す。腰を反りすぎたり、痛みが出たりする場合は中止し、より易しい課題に戻る。
「左右の足が一緒に動いている?」
手・キック・呼吸を合わせる
陸上で順序を確認してから、短い区間で組み合わせる。疲れて動きが崩れる前に休む。
「手の動きとキックは、どこで合う?」

泳法の要点は現行の中学校学習指導要領解説と上記公式手引を参照。練習の区切り方・問いかけは授業用の提案です。
水中スタート・ターン|泳ぎを安全につなぐ
壁を蹴って、伸びた姿勢から泳ぎ始める。下向きに深く潜る練習にはしません。前の人が離れ、進む範囲が空いたことを教師が確認してから出発します。

ターンは、まずゆっくり壁に触れて向きを変えるところから。壁際で追突しない間隔を取り、回転の速さを競う前に、安全に折り返せるかを確かめます。公式手引のターン図解(p.120~121)
つまずいたとき|距離を減らして、観点を一つに
| 見られる様子 | 戻る課題・変える条件 | 次に確かめること |
|---|---|---|
| 顔をつけると慌てる | 教師の近くで、自分で水をつけるところへ | 嫌だったことを伝え、止められるか。 |
| 浮くと立てなくて怖い | 立てる水深で、浮く→足を底につける | 自分で落ち着いて戻れるか。 |
| クロールの呼吸で止まる | 立位で腕と顔の向き→短い泳ぎ | 吸うときに頭を大きく持ち上げていないか。 |
| 平泳ぎで忙しく手足を動かす | キック後の伸びを一回ずつ確認 | 蹴った後に進む感じがあるか。 |
| 泳げるが後半に崩れる | 距離を短くし、休息・ペースを調整 | 同じ姿勢とリズムが続くか。 |
| 泳げる生徒が退屈する | 同じ距離で、呼吸やかきの回数・リズムを比較 | 何を変えたら泳ぎやすくなったか。 |
「25mできない人」と固定せず、呼吸を整える/リズムをつなぐ/泳ぎを磨くなど、今の課題で区切ります。課題の変更は教師が確認し、泳力に合わない深い場所へ生徒だけで移動させません。
初回50分の例|いきなり全員の25m計測にしない
| 時間 | 活動 | 教師が見ること |
|---|---|---|
| 0~10分 | 更衣・集合・健康観察・人数確認 | 参加上の配慮、体調、入水しない場合の学習。 |
| 10~18分 | 安全の約束・準備運動・シャワー・入水 | 合図、水深、移動経路、バディと成人による確認。 |
| 18~28分 | 水慣れと泳力の段階確認 | 立てる範囲で呼吸・浮く・立つ。無理な一斉泳力テストをしない。 |
| 28~38分 | 教師が指定した課題を短く練習 | 水慣れ/姿勢/呼吸など。一人に付き切りにならない監視体制。 |
| 38~43分 | 再確認・退水・人数と体調確認 | できたことと次の課題。全員が退水したこと。 |
| 43~50分 | 更衣・振り返り | 不調がないか確認し、次時の課題を一言残す。 |
時間は例です。更衣・移動・衛生面の手順を含め、施設や学級に合わせて余裕を確保します。外部施設への移動がある場合は、そのまま当てはめません。
8時間の単元案|クロール+平泳ぎを中心に
年間の配当を指定するものではなく、授業づくりの一例です。水慣れの学び直しを並行し、毎時間「課題を選ぶ→短く試す→確かめる」を繰り返します。
| 時 | 主な学習 | 振り返り |
|---|---|---|
| 1 | 安全確認・水慣れ・段階的な泳力確認 | 自分が安心してできることは? |
| 2 | 浮く・立つ・呼吸を整える | 困ったときに戻れる? |
| 3 | クロール:姿勢とキック | 姿勢を保てた条件は? |
| 4 | クロール:手と呼吸の組合せ | 一つ変えたらどうなった? |
| 5 | 平泳ぎ:キックと伸び | 足で押して進む感じは? |
| 6 | 平泳ぎ:手・呼吸・キック | 動きの順序がつながった? |
| 7 | 自分の課題練習+水中スタート・ターン | 仲間の助言をどう使った? |
| 8 | 学習のまとめ・泳ぎの変化を確認 | 記録と動き、どちらがどう変わった? |
3年生では、学んだ泳法を組み合わせたり、安全に運営できるリレーに発展させたりできます。速さだけでなく、安定したペースやつなぎ方も課題にします。泳力・体調を無視した距離設定や、飛び込みスタートは行いません。
そのまま使える|5つの確認カード
□ 落ち着いて呼吸
□ 浮く姿勢
□ 手足のタイミング
今日一つ見るのは:__
先生と確認した場所:__
練習する動き:__
難しいときに戻る課題:__
□ 体調とバディを確認
□ 前の人と間隔がある
□ 範囲と止まる合図が分かる
□ 先生の開始合図を待つ
約束した安全な位置から、一つの動きを見る。
見えたこと:__
次に試せそうなこと:__
変えたこと:__
変わったこと:__
次の課題:__
□ 不調や怖さは先生に伝えた
仲間の観察・バディは学習や確認の補助です。生徒に監視や救助の責任を任せません。評価もタイムや距離だけでなく、課題の選び方、工夫の説明、安全な取り組みなどを学習場面で見取ります。
安全管理|授業前に教師同士で共有する
- 指導と監視を分担。全体・水中に死角ができない配置、人数確認の方法、交代時の引継ぎを決める。撮影・動画提示中も監視を途切れさせない。
- 施設を実際に確認。水深・傾斜・足場・排水口・救命具・退水経路を点検。外部施設でも、いつものプールと同じと判断しない。
- 体調と環境で変更・中止。寒さ、震え、息苦しさ、疲労、熱中症リスク、雷などを確認。給水・休息を取り、学校の基準に従う。
- 危険な活動を加えない。飛び込み、押す・沈める行為、長い息止め・過呼吸・潜水距離の競争をしない。浮島の下をくぐる課題は入れない。
- 緊急時の役割を確認。通報、救助、AED搬送、他の生徒の退水・誘導を事前に訓練。異変時は直ちに授業を止め、119番と学校の救急手順に従う。
本記事は監視・救助研修や施設の安全計画の代わりにはなりません。2026年度の事故防止通知、学校向け別紙を実施前に確認してください。
泳げることと、水辺で安全に行動できることは別
一人で水辺に行かない、危険な場所に近づかない、異変を見たら大人や救急へ知らせるなど、事故防止の心得も必ず扱います。プールで泳げても、川や海で同じように泳げるとは限りません。生徒が救助のために飛び込むような指導はしません。
日本ライフセービング協会「守ろう!いのち 学び合おう!水辺の安全」は、雨天時や事前学習の資料にも使えます。
雨天・見学時にも、課題を考える学習を
教室では動画を見て「どこで呼吸しているか」「次は何を試すか」をカードに記入します。見学者にも体調に合う学習を用意し、炎天下での長時間の記録係や監視役にはしません。撮影する場合は学校のルールを守り、本人の同意や保存・削除、映り込みに配慮します。
教材研究に役立つ参考書
日本水泳連盟編『水泳指導教本 三訂版』(大修館書店)。水泳指導者向けに指導法や競技規則を扱う教本です。学校の単元案集ではなく、指導の背景を学ぶ一冊として紹介します。
2019年刊。現行の学校での安全上の取扱いや規則は最新資料で確認してください。無料の文部科学省「水泳指導の手引」とは別の書籍です。
体育.netの書籍一覧を「水泳・安全」で絞り込み、学校種や内容を見比べられます。
次の授業準備に|中学校の授業実践パック
配布用の練習表や、編集できる資料を用意したい先生へ。柔道・バレーボール・ダンスでは、授業で使える教材パックをご用意しています。
柔道|授業実践パック技能練習表・Word・教師用ガイド内容・価格を見る →
バレーボール|授業実践パック技能練習表・学習記録・Word内容・価格を見る →
ダンス|授業実践パック構成表・評価シート・Excel内容・価格を見る →3教材はそれぞれ別売りです。
参考資料
- 中学校学習指導要領解説・保健体育編(令和6年12月一部改訂):水泳の内容・取扱い。
- スポーツ庁・中学校の体育授業の工夫例:動画3本。
- 文部科学省「水泳指導の手引(三訂版)」:技能指導の写真・図解。2014年の資料。
- スポーツ庁・水泳等の事故防止通知(2026年4月28日)
- 版元ドットコム・『水泳指導教本 三訂版』書誌情報
資料・リンク確認:2026年9月15日。動画や資料は公開元の都合により変更される場合があります。