運動会や50m走に向けて、こんな場面はありませんか。
- タイムは測ったけれど、走り方を教える時間が少ない。
- 「速く走って」以外の声かけに迷う。
- リレーは盛り上がるのに、バトンを渡すときに止まってしまう。
結論から言うと
いつもの計測やリレーの間に、「出だし」「走り抜け」「受け渡し」を練習する時間を入れます。1回の練習で直すことは一つ。動画で確かめ、試して、もう一度走る。タイムだけでなく「何を変えたか」が残る授業にします。
このページは、短距離走・リレーの基本を教えたい中学校の先生向けです。スポーツ庁・日本陸連の資料と、学研の中学校向け実技動画をまとめました。以下の時間配分・練習の組合せは、公式資料を参考にした授業案です。学校の実態に合わせて調整してください。
出だしと走り抜けを試す
受け渡しのタイミングを合わせる
工夫した動きを実際に使う
見たい動きから探す|短距離走・リレーの動画
授業では全部を続けて見せず、今の課題に合う1本を選びます。まずはスタート・走り抜け・バトンパス。細かな構えの違いは、必要になってから確認できます。
動作別動画の掲載元:学研「学校教育ネット」体育実技・陸上競技。動画は配信元のプレーヤーで表示しています。学校の通信制限等で再生できない場合は、各動画のリンクまたは掲載元を開いてください。
クラウチングスタート
見るところ:構えから、最初の一歩まで。
スタートダッシュ・加速
見るところ:走り出してからの上体の変化。
スピードに乗った走り
見るところ:腕と脚のリズム。
フィニッシュ
見るところ:ゴール直前で動きが止まっていないか。授業ではまず、まっすぐ走り抜けることを大切にします。
コーナーの走り方
運動会の周回リレーにつながる動き。直線練習のあと、コースを確かめて取り入れます。
バトンパス|上から渡す
二人の手の位置と、渡す向きを確かめます。
バトンパス|下から渡す
上からの方法との違いを確認。練習ではチーム内で方法をそろえます。
第2~第4走者のスタート
バトンを待つ構えから、走り出す動きを見ます。
ゆっくり走りながら渡す
止まった練習から、動きながらの受け渡しへ。
構え・その場でのパスを、もう少し詳しく見る(7本)
足の置き方を細かく比べるのは、基本の構えを試してからで十分です。
授業の組み立てを見る|スポーツ庁の教師用動画
感染症対策のために制作された中学校教師用資料です。制作当時の対策と現在の運用は区別し、授業づくりの参考としてご覧ください。長距離走も含まれます。YouTubeで見る/公式掲載ページ
まずはスタートと走り抜けを教える
初めから細かい角度を全部覚えさせるのではなく、教師がお手本を見せ、「今はここを見る」を一つ伝えます。下の練習距離・回数は授業用の例です。全力走を休みなく繰り返す計画にはしません。
| 段階 | 練習例 | 短い声かけ |
|---|---|---|
| 1 出だしを試す | 立った構えから10~15m。足を前後に置き、合図で前へ進む。2回程度試し、歩いて戻って休む。 | 「上に跳ぶより、前へ進もう」 |
| 2 低い構えを学ぶ | 安全な地面で、手と足の位置を確認。クラウチングの「位置について→用意→走り出し」を分けて練習する。 | 「構えを止めて、合図で出よう」 |
| 3 加速をつなぐ | 20~30m程度。横から見て、出だしから走りへつながる様子を比べる。 | 「急に起き上がらず、走りながら起こそう」 |
| 4 走り抜ける | 30~50m程度。ゴールの先にも走り抜けの目印を置き、その先に十分な減速場所を確保する。 | 「線の手前で止めず、その先まで」 |
「ずっと低く」「全員同じ歩幅で」と固定しません。生徒の体格・経験に応じた自然な加速を見ます。ブロックを使う授業では固定と足の位置を教師が確認し、ブロックを使わない体力テストと区別します。
□ 合図の前に静止できた □ 出だしから滑らかに加速した □ ゴール前で緩めず走り抜けた
「さっきより出だしが前に進んでいたよ」など、見えた動きを伝えます。タイムが変わらない日も、動きの変化は振り返れます。
リレーは「手の形」から「二人のタイミング」へ
受け渡しの方法を覚えたら、次は走り出すタイミングです。手を早く出したまま待つだけでなく、受け手も走ってからつなぐ感覚を育てます。
使う手・合図・渡し方をそろえる
二人の間隔を確かめる
走り出す目印を調整する
ここでは最初にオーバーハンドパスを試す授業案とします。すでに別の方法に慣れている学級は、それを生かして構いません。方式を増やすことより、落とさず、ぶつからず、動きながらつながることを優先します。
目印は、二人で試して決める
同じ進行方向に走る直線の練習レーンを作り、受け渡しの範囲と次走者の待つ位置を示します。前走者がどこに来たら次走者が走り始めるか、後方に目印を置いて試します。最初は余裕のある速さで、1組ずつ。教師が成功する間隔を確認してから速さを上げます。
| 起きたこと | まず確かめる | 次に試すこと |
|---|---|---|
| 追いついて詰まる | 受け手の出発が遅くないか | 他の条件をそろえ、前走者が目印に来たらすぐ出る。必要なら目印を待つ位置から遠ざけ、早めに出られるよう調整。 |
| 追いつけない | 受け手が早く出すぎていないか | 目印を待つ位置へ近づけて、出発を遅らせて試す。 |
| 手に入らない | 手の位置・合図・左右のずれ | 速さを落とし、その場や歩きで同じ位置へ渡し直す。 |
目印の距離は全員同じにしません。走力だけでなく、構え・反応・前走者の速さでも変わります。渡し方と目印を同時に何度も変えず、一つずつ比較します。
運動会につなぐなら、最後に本番のコースで
直線の2人組練習でできた受け渡しを、運動会の走路・走順へ移します。コーナー、待つ場所、渡した後の退避まで確認します。学級対抗リレーと競技会の4×100mリレーは同じ条件とは限らないため、受け渡し区間などは学校の実施ルールを先にそろえます。
同じメンバー・距離・走順で、練習前後のタイムと受け渡しを比べます。「今回は止まらずにつながった」「2組目の目印を直した」も成果にします。個人タイムの合計との差には助走やコース条件も影響するため、その差をそのままバトン技能の点数にはしません。
新体力テストの50m走と、授業の練習を分ける
中学校で行う新体力テスト(12~19歳対象)の50m走は、クラウチングスタートの要領で行います。授業の導入で立って走り出す練習をしても、公式の測定は実施要項に合わせます。
| 場面 | 方法の考え方 |
|---|---|
| 授業中の練習 | 短い距離・立った構えなどで課題を絞る。前後を比べるときは距離とスタート方法をそろえる。 |
| 新体力テストの測定 | 直線50m、クラウチングの要領。スパイク・スターティングブロックは使わない。1回実施し、記録は0.1秒単位(未満切り上げ)。 |
| 運動会の競走 | 学校の実施要領を確認。授業の練習条件と違う場合は、生徒にも伝える。 |
測定では、スタートの合図から胴がゴールラインに達するまでを計ります。ゴールの5m先まで走る設定とし、さらに先にも安全に減速できる空間を取ります。計時者・記録者・待機者は走路とその延長上を空けます。
出典:スポーツ庁「新体力テスト実施要項(12~19歳対象)」冊子p.9。配布ファイルの構成が変わった場合は「50m走」のページを開いてください。最新版の掲載ページ
授業の流れ|まず3時間、単元なら6時間の例
運動会前など時間が限られる場合は、①出だし・走り抜け、②2人のバトンパス、③リレーで確かめるの3時間から取り入れられます。6時間確保できる場合は、次のように練習と確認を分けます。
| 時間 | 主な活動 | 残すもの |
|---|---|---|
| 1 | 試しの走り、動画と教師の示範、短いスタート練習 | 自分が変えたい動き一つ |
| 2 | クラウチングからの加速、ペア観察、走り抜け | 仲間に見てもらった変化 |
| 3 | 同じ条件での確認走、課題別練習 | タイムと動きの両方 |
| 4 | その場→ゆっくり走るバトンパス | 手・合図・方法の約束 |
| 5 | 2人で加速して渡す、目印の調整 | うまくいった目印と出方 |
| 6 | チームでリレー、再挑戦と振り返り | 工夫した受け渡し・次の課題 |
学習指導要領解説の距離の目安は、中1・2の短距離走が50~100m程度、中3が100~200m程度。リレーは一人50~100m程度です。上の短い距離は部分練習の例で、年間計画・学年・体力・校庭に合わせて単元を組みます。中学校学習指導要領解説・保健体育編
最初の50分|測るだけにしない1時間
| 時間 | 活動 | 教師が見ること |
|---|---|---|
| 0~8分 | 健康・走路確認、準備運動、軽い走りから徐々に加速 | 体調、痛み、滑り、減速場所 |
| 8~15分 | 試しの30~50m走。2人組で出だしかゴール前のどちらかを観察 | 順位ではなく、直したい動きを選べるか |
| 15~20分 | 該当動画1本と示範。今日のポイントを一つ決める | 何を見るか共有できたか |
| 20~33分 | 10~15mの出だし、構えを確かめる練習。走者と観察者を交代 | 安全に静止し、前へ走り出せるか。休息が取れているか |
| 33~44分 | 同じ条件で確認走。必要なペアだけ短く撮影 | 走り抜け、本人の感覚と仲間の観察 |
| 44~50分 | 整理運動、記録、次時の課題 | 変えたことを一つ言えるか |
毎回全員の動画を長く撮る必要はありません。撮影するなら走路外の固定した場所から短く撮り、見返したら練習へ戻します。端末を見ながら歩いたり、走路へ入ったりしない約束を先に決めます。
板書・投影で使える5つの確認カード
今日は □ 出だし □ 加速 □ 走り抜け □ バトンパス をよくする。
変えてみること:________
□ 短い距離で構えを確かめる □ 少し長く走ってつなぐ
□ 止まって渡す □ ゆっくり走って渡す □ 加速して渡す
うまくいかないときは、一つ前の速さ・動きへ戻る。
□ 走路とゴールの先に人や物がない □ 靴ひもが結べている
□ 前の組が走路を空けた □ 痛み・体調不良を先生に伝えた
見るのは一つ:________
よくなった動き:________
次に試せそうなこと:________
距離・スタート方法:____ 記録(計った場合):____
今日変えたこと:________
次に確かめること:________
実施前の安全と、評価の見取り
- 走る方向と戻る動線を分け、ゴール先・バトン区間に待機者を置かない。
- 地面の穴・ぬかるみ・滑り、靴ひも、ブロックを使う場合の固定を確認する。
- バトンは投げずに渡す。落としたら周囲を確認し、他の走者の前へ飛び出さない。
- 暑さや体調に応じて本数・休息・活動場所を調整する。痛みや不調があれば中断し、学校の対応手順に従う。
- 全力走を休みなく続けず、回復してから次の試技へ。雨天に狭い体育館で同じ全力リレーを無理に行わない。
評価は速い順だけで決めず、学年の目標に沿った動き、課題に合う練習の選択、具体的な助言、安全に取り組む姿も見ます。苦手な生徒を計時係に固定せず、走る・見る・記録する役割を交代します。
図解で詳しく確認したい先生へ|日本陸連の資料
以下は中学校の部活動向けの指導資料です。授業で扱う基本を確認し、専門的なドリルや練習量はそのまま全員に当てはめず選んで使います。
PDFは枠の中でページを送れます。スマホなどで表示されない場合や、大きく見たい場合は下のボタンから原本を開いてください。
短距離走|走動作と練習方法
スタート|構え・蹴り出し・加速
クラウチングスタートの図解に加え、4ページ目(冊子p.22)には、前傾姿勢からのスタンディングスタートなどの練習例もあります。立った構えからの短い加速練習を確認したいときはこちらへ。
リレー|受け渡しと目印の調整
出典:日本陸上競技連盟「中学校部活動における陸上競技指導の手引き」。大会に参加する際の規則は大会要項・最新の競技規則も確認してください。
教材研究をもう一歩進める参考書
『基礎から身につく陸上競技』
陸上競技指導教本アンダー16・19[初級編]
日本陸上競技連盟 編/大修館書店
短距離とリレーの技術・練習を、ほかの陸上種目と併せて確認したい先生へ。中高生の競技指導向けなので、授業では基本動作と段階練習を選んで活用する参考書です。
広告リンク。版・価格・在庫は購入先でご確認ください。
体育の書籍ライブラリーでは、陸上運動・陸上競技の本を一覧で探せます。学校種やキーワードでも絞り込めます。
持久走の授業も準備する場合は、自分に合うペースをつかむ長距離走の授業もご覧ください。
次の授業準備に|中学校の授業実践パック
配布用の練習表や、編集できる資料を用意したい先生へ。柔道・バレーボール・ダンスでは、授業で使える教材パックをご用意しています。
柔道|授業実践パック技能練習表・Word・教師用ガイド内容・価格を見る →
バレーボール|授業実践パック技能練習表・学習記録・Word内容・価格を見る →
ダンス|授業実践パック構成表・評価シート・Excel内容・価格を見る →3教材はそれぞれ別売りです。
