走り幅跳びで、こんな姿はありませんか。
- 助走は速いのに、踏み切りの直前で足を刻んでしまう。
- 「もっと遠くへ」以外に、何を伝えればよいか迷う。
- 記録を測って終わり、動きの変化が残りにくい。
助走して跳ばせる前に、まず「踏み切り」を教える。
「膝をおへそへ」「上げて、下ろして、着地」。短い声かけで一つずつ動きを確かめ、最後の3歩、自分に合う助走へ広げます。
私の授業資料をもとに、動画・図解と組み合わせて進め方を整理しました。6時間案は記事用に組み直したモデルです。距離や練習条件は、生徒と砂場の状態に合わせて調整してください。
教える順番は「踏み切り→着地→最後の3歩→助走」
実際の動作は助走から始まりますが、教えるときは、踏み切る一歩の感覚を先につくると整理しやすくなります。一度に全部直さず、今日はどこを見るかを決めます。
① 踏み切り
「膝をおへそへ」
振り上げ足と腰の高さを見る。
② 腕と着地
「上げて、下ろして、着地」
足を前へ運び、安全に着地する。
③ 最後の3歩
「ダ・ダ・ダン」
手前で止まらず、踏み切りにつなぐ。
④ 助走を調整
「スタート位置で合わせる」
出だしをそろえて、少しずつ調整する。
以下では、授業資料のイラストを動きごとに拡大して示します。教師の示範と合わせて使ってください。
一歩の踏み切りから教える|絵で分かる3段階
① 踏み切り|振り上げ足の膝を前上方へ

最初から長く走らせず、一歩踏み出して、片足で地面を押す動きを教師が見せます。「踏み切り足」は地面を押す足。「振り上げ足」はその反対の足です。生徒はまず小さく試し、自分が踏み切りやすい足を確かめます。
① 立った姿勢で、片膝を前上方へ運ぶ。
② 一歩踏み出して踏み切り、その膝を運ぶ。
③ 安全に着地できる位置から、砂場への小さな跳躍につなぐ。
一歩で届く、安全な踏み切り位置と着地範囲を教師が確認します。砂場の縁を越えること自体が難しい場合は、無理に跳ばせず場や課題を変更します。
振り上げ足を前上方へ運ぶためのイメージです。必ずその高さに届かせる判定ではありません。膝を上げるために止まったり、上だけに跳んだりせず、前へ進む動きにつなげます。
| 進め方 | 教師・仲間が見るところ |
|---|---|
| 一歩の踏み切りを試す | 踏み切る足、怖さ、着地の安全を確認する。 |
| 教師の示範→もう一度 | 膝が前上方へ動いたか。一度に腕や助走まで直さない。 |
| 同じ条件で2~3回 | 腰が大きく落ち込まず、走りから跳躍につながったか。 |
② 腕と着地|足を前へ運ぶ感覚をつくる

上げて:踏み切りに合わせて腕を上へ。
下ろして:着地に向けて腕を前から下へ振る。
着地:両足を前へ運び、砂に着いたら膝を曲げる。
①の踏み切りに、腕と着地を付け足します。まず立ったまま腕の順序を確かめ、一歩からの小さな跳躍でつながるかを試します。滞空時間が短いうちは動きを大きくしすぎず、できてきたら短い助走へ広げます。腕を回すことだけに集中させず、安全な着地まで見ます。
両足を前に運び、砂に着いたら膝を曲げて衝撃を受け止めます。膝を伸ばしたまま突っ張らないこと、着地直後に後ろへ倒れ込まないことを確かめます。
「足を遠くへ」だけを求めると、体が後ろに残ることがあります。記録のために無理な姿勢を取らせず、まず安定した着地を優先します。そりの形や大きな腕回しは、最初の必須条件にしません。
③ 最後の3歩|歩幅を変えて、素早く踏み切る

「ダ・ダ・ダン」は、単に3歩を数える合図ではありません。踏み切り2歩前から1歩前は大きめに、1歩前から踏み切りまでは短く・素早く。この歩幅の変化で、走りの勢いを踏み切りへつなぎます。
2歩前 ── 大きめ ── 1歩前 ─ 短く ─ 踏み切り
ダ ダ ダン!
「ダン」で片足が地面を素早く押します。両足をそろえて跳ぶ動きではありません。図は歩幅の関係を示すもので、決まった距離の比率ではありません。
日本陸連の資料では「タン・タ・タン」と表現されています。ここでは授業で使った「ダ・ダ・ダン」で、同じ踏み切り準備のポイントを伝えます。日本陸連の踏み切り解説(p.40)
一歩の練習で覚えた動きを、まず3歩から。そして助走を伸ばした後も、最後の3歩で確かめます。
| 踏み切り足 | ダ(2歩前) | ダ(1歩前) | ダン(踏み切り) |
|---|---|---|---|
| 右足で踏み切る | 右 | 左 | 右 → 跳ぶ |
| 左足で踏み切る | 左 | 右 | 左 → 跳ぶ |
左右どちらも小さく試して、踏み切りやすい方を選びます。利き手と同じ側に決める必要はありません。最後の一歩を素早く接地し、①で覚えた膝の振り上げにつなげます。「3歩を数える」で終わらず、ダンで踏み切れているかを見ます。
「大きめ」は足を無理に前へ突き出すことではありません。最後を短くするために急ブレーキをかけず、流れの中で素早く踏み切ります。踏み切り位置が合わない場合は、その場で足を合わせ続けるより、次の助走調整へ進みます。
助走は「長ければよい」ではない|スタート位置を合わせる
3歩でつながったら、助走を付けます。ここは「自分に合う距離で」と言うだけでは決めにくいところ。距離を考える→歩数を数える→逆走で出発点を探す→通常方向で確かめるまで行います。
① 「5m・20m・40mなら、どれがよさそう?」
まず予想を出してもらいます。「長い方が速くなる?」「長すぎると合わせにくくない?」。5mほどの短い助走と、教師が安全を確認した長めの助走を示範や試技で比べ、踏み切りまでつながるかを話し合います。40mは長さを考える比較例で、全員に走らせる課題ではありません。
私の実践では20~25m前後を目安に検討しましたが、一律の正解ではありません。日本陸連は初心者・ジュニアについて10歩程度から始め、2歩ずつ調整する方法を示しています。まず10歩程度で試し、踏み切り前に速さが落ちない範囲を探します。歩数とメートルは体格・走り方で変わります。日本陸連の解説(p.39)
② ペアで歩数を数える|何を1歩とするかをそろえる
教師が決めた仮の出発点から、通常方向に走って跳びます。ペアは走路の外で、走り出した後の最初の接地を「1」として、左右どちらの足も数えます。踏み切りの接地も含めて「10歩だったね」などと確認。出発時の前足と、踏み切り足も記録します。
歩数が多い方がよいわけではありません。10歩で難しければ短く戻し、安定すれば12歩などを検討します。踏み切り位置に無理に足を合わせず、最初は走りのリズムを優先します。
③ 逆走で、出発点の目安をつくる
教師の合図で通常の跳躍をすべて止め、助走路とその先を空けます。「逆走」は後ろ向き走ではなく、砂場を背にして、普段と反対方向へ前向きに走ることです。1人ずつ行い、通常の助走と同時には行いません。
砂場側の踏み切り位置から出発
砂場 | 出発 → 1・2…10 → 走り抜ける
ペアは走路の外で10歩目の接地点を見る。
走者が通過してから、その位置に対応する走路外の目印を置く。
- 踏み切り位置を基準に、砂場を背にして構える。出発姿勢と前足は教師と確認し、毎回そろえる。
- 普段の助走に近い加速で、決めた歩数を越えて走る。「10歩目で止まる」と考えて減速しない。
- ペアは走路外から、10歩目などの接地点を見て覚える。走者の足元へ入ったり、走りながら目印を投げたりしない。
- 走者が通過してから目印を置く。2~3回確かめ、大きくばらつく場合は出だしからやり直す。
逆走の目印は仮の出発点です。向きを変えれば走りの感覚も変わるので、これで完成にはしません。教師が逆走の終了と全員の退出を確認し、通常方向へ切り替えます。逆走で助走距離を探す方法:日本陸連(p.44)
右足を前に構え、左足の最初の接地を1歩目と決めると、左1→右2→…→右10で踏み切れます。構えたまま地面にある足は数えません。
逆走も同じ構え・最初の一歩で行い、10歩目の位置を仮の出発点にします。左足踏み切りなら左右を反対に。これは数え方をそろえる一例で、すでに安定した出方がある生徒は、その方法を記録して合わせます。
④ 通常方向に戻して、微調整する
砂場 | 踏み切り ← 同じ歩数で助走 ← 仮の出発点
ペアは踏み切り位置の側方から「手前・目安内・先」を確認する。
目印から、決めた前足・出だしで走って跳びます。最後が逆の足になる場合は、無理に一歩足さず、出発姿勢・最初の一歩・数え方を教師と確認します。距離だけでなく、同じ足で踏み切れているかまで見ます。
スタートする足・位置・最初のリズムを決める。
同じ条件で踏み切り位置を仲間に見てもらう。
スタート位置を小さく動かして、もう一度。
| 同じ出だしで試した結果 | 次に試すこと |
|---|---|
| 踏み切りの目安を越えることが続く | スタート位置を少し後ろへ移す。 |
| 目安より手前になることが続く | スタート位置を少し前へ移す。 |
| 手前・先が毎回ばらばら | 位置の修正を急がず、出だしと走るリズムをそろえる。 |
| 助走を伸ばすと直前で失速する | 短い助走へ戻し、つながる速さを確認する。 |
調整する向きは、同じ歩数・出だし・走り方がそろっている場合の目安です。1回のずれだけで決めず、変更後も再確認します。目印は走路の外側に置き、走りの邪魔にしません。
導入では、安全な踏み切り範囲を教師が設定し、止まらず跳べることを優先できます。その後、目安となる位置へ合わせる練習に進みます。砂場の縁や硬い部分に着地する危険がない位置を選びます。
目印は「自分の助走を始める場所」
助走路の横に置く番号付きの三角マーカーは、自分の出発点を見失わないための目印として使えます。砂場のそばにある踏み切り位置とは別です。「青の2番から、いつもの足でスタート」と決めると、毎回測り直さず練習できます。
左端の線=踏み切り位置
▲=助走路の外側に置く出発点の目印
色と番号は区別の例です。間隔・距離の縮尺は示していません。
個別に用意できるなら色+番号で区別します。数が限られる場合は、助走が近い生徒で共通の目印を使い、「青2から靴1足分後ろ」など本人の調整分をカードに残す方法もあります。色だけに頼らず、番号も添えます。
目印は走路・着地範囲・戻る動線を避け、蹴ったりつまずいたりしない位置へ。移動は試技を止めてから行い、共用の目印を一人の判断で動かさないようにします。
つまずきから、次の練習を選ぶ
| 見えた姿 | 次の一手 | 仲間の短い助言 |
|---|---|---|
| 踏み切るときに腰が沈む | 短い助走へ戻り、振り上げ足を確かめる。 | 「膝を前に運んだとき、つながったね」 |
| 踏み切り直前で足が細かくなる | 出だしを固定し、位置のずれを2~3回見る。 | 「最後だけ細かくなっていたよ」 |
| 走り抜けるだけで跳躍につながらない | 助走を短くし、片足で踏み切る感覚を確認。 | 「今日は踏み切りだけ見よう」 |
| 足が前へ出ず、すぐ着地する | かがみ跳びの動画で着地を見て、短い助走で試す。 | 「両足を前へ運べたかな」 |
| 着地で後ろに手をつく | 無理に足を伸ばしすぎず、着地後の体の移動を見る。 | 「着いた後までつなげよう」 |
| 砂場への着地が怖い | 助走を短くし、安全に着地できる課題を教師と選ぶ。 | 「今日はこの距離からで大丈夫」 |
6時間の単元モデル|一つずつ、最後につなぐ
| 時間 | 主な活動 | 確かめること |
|---|---|---|
| 1 | 安全・役割・全体動画。短い助走で試しの跳躍。 | 自分の踏み切り足、怖さ、今の動き。 |
| 2 | 踏み切りの示範→練習→同条件で確認。 | 振り上げ足と腰の高さ。 |
| 3 | 腕と着地を確かめ、踏み切りにつなぐ。 | 両足を前へ運び、安定して着地する。 |
| 4 | 最後の3歩を練習し、短い助走から跳ぶ。 | 直前で足を刻まずにつながる。 |
| 5 | 助走を比較→歩数確認→逆走で仮の目印→通常方向で調整。 | 自分に合う距離・歩数・出だし。 |
| 6 | 課題別練習→記録→再挑戦と振り返り。 | 記録と動きの変化を説明する。 |
1時間の流れ|説明を短く、試す時間を確保する
| 時間 | 活動 |
|---|---|
| 0~8分 | 健康・場の確認、準備運動、軽い走り。 |
| 8~15分 | 今日の課題を一つ。短い動画・示範と試しの跳躍。 |
| 15~35分 | 役割を交代しながら練習。助言→再挑戦。 |
| 35~45分 | 同じ条件で確認し、記録・観察を残す。 |
| 45~50分 | 振り返り、整理運動、合図後に片付け。 |
砂場1か所に全員が並ぶと試技数が減ります。学級規模に合わせ、走路と離れた場所で腕の確認・動画の見直し・記録整理を交代で行います。硬い床で着地を繰り返す場や、跳躍者の正面に観察場所をつくらないようにします。
砂場1か所でも、安全に回す役割分担
「跳びます」→安全確認の返事を待って出発。
走路・着地場所の外から、今日の一点を見る。
跳躍が終わってから入る。退出後に次の試技。
- 教師が砂の深さ・柔らかさ、異物、縁、助走路の滑りや凹凸を確認する。砂は掘り起こし、着地跡をならす。
- 砂場と助走路から全員が退出したことを確認してから、次の生徒が出発する。戻る動線は走路と分ける。
- メジャーやならす用具は試技前に走路・着地範囲から出す。用具の調整中は全員の跳躍を止める。
- 観察・撮影は側方の安全な位置から。着地の正面や助走路の延長に立たない。
- 補助台・踏切板・マットを使う発展練習は、教師が設置と着地範囲を確保できる場合だけ。図を見て生徒だけで組み立てない。
- 痛み、疲労、暑さ、恐怖感に応じて回数や課題を変える。雨天に硬い床や狭い室内で同じ跳躍を行わない。
記録と評価|距離だけで終わらせない
授業の始めに「どこからどこまで測るか」をそろえます。踏み切り線から測る方法と、実際に踏み切った位置から伸びを確かめる方法を混在させません。授業用の実距離測定は、競技の公式記録とは区別します。
同じ条件の記録に加え、踏み切りと着地、課題の選び方、仲間への助言、安全な役割分担を見取ります。中1・2では助走から滑らかにつなぐこと、中3ではリズムや力強い踏み切りなども、学年の目標に沿って扱います。学習指導要領解説・保健体育編
動画で全体像を見る|まずはかがみ跳び
最初の1本では、助走→片足で踏み切る→両足を前へ出して着地する流れを見ます。空中の形を細かくまねるより、まず踏み切りと着地がつながることを大切にします。
掲載元:学研「学校教育ネット」体育実技・陸上競技。配信元の動画を埋め込んでいます。
かがみ跳び|授業の基本に
最初は全体を1回。その後は「踏み切りの膝」「着地の足」など、今日の課題だけを見直します。
発展・比較用|全員に習得させる課題ではありません
「跳び方には違いがある」と知りたいときの2本です。そり跳び・はさみ跳びの難しさを競わせず、かがみ跳びでも滑らかさや着地の質を高められます。
そり跳び
空中での体の使い方を比較する動画。反る形を無理につくらせず、教師が技能と安全を確認して扱います。
はさみ跳び
空中で脚を動かす発展的な跳び方。まずは基本の助走・踏み切り・着地を安定させます。
図解で見渡す|日本陸連の公式資料
日本陸連の手引きには、走り幅跳びの技術と段階練習が6ページでまとまっています。ここでは短い助走から一連の跳躍へ進むページをプレビューできます。
部活動向けの資料です。記載の助走歩数・補助台等は授業の全員に適用する条件ではありません。原本の逆走による助走確認も、跳躍中の走路へ混在させません。本記事では逆走で仮の位置を探し、通常方向の試技で調整する授業用の手順を紹介しています。
板書・投影で使える4つの確認カード
□ 踏み切り □ 腕と着地 □ 最後の3歩 □ 助走
今日の合言葉:______
出発時の前足:右・左 踏み切り足:右・左
助走:__歩/__m 自分の目印(色・番号):____
目印からの調整:__足分 前・後ろ
通常方向で確認:手前・目安内・先 次の変更:____
□ 助走の終盤:腰が落ち込みすぎず、上体を起こして走れている
□ 最後の3歩:大きめ→短く・素早く踏み切れている
□ 着地:両足を前へ運び、着いたら膝を曲げている
今日見る項目に○。仲間から一言:「____がよくなったね」
観察する範囲は、例えば最後の5mほど。5m地点で急に姿勢を変える指示ではありません。「腰高」は背中を反らせたり、体を固めたりすることではなく、終盤にしゃがみ込むような走りになっていないかを見る合言葉です。
1回目:__m 2回目:__m 3回目:__m
測り方・助走条件:____
よくなった動き:____ 次の課題:____
教材研究をもう一歩進める参考書
『基礎から身につく陸上競技』
陸上競技指導教本アンダー16・19[初級編]
日本陸上競技連盟 編/大修館書店
「走幅跳の技術」「走幅跳の練習方法」を収録。動きの説明と練習の引き出しを併せて確認したい先生向けです。競技指導の内容から、授業に合う部分を選べます。
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体育の書籍ライブラリーで「陸上運動・陸上競技」をまとめて表示できます。「走幅跳」「走り幅跳び」などのキーワードでも探してみてください。
助走の走り方を確認するなら、短距離走・リレーの動画一覧も参考にできます。
次の授業準備に|中学校の授業実践パック
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参考資料
- 体育.net授業資料「走り幅跳び イラスト付き授業実践ガイド」
- 文部科学省:中学校学習指導要領解説・保健体育編
- 学研:体育実技・陸上競技の動画
- 日本陸連:中学校部活動における陸上競技指導の手引き
- 大修館書店:紹介書籍の内容・目次
