- 剣道を教える経験が少なく、何から始めるか迷う。
- 竹刀や防具の安全確認に不安がある。
- 礼法や素振りだけで終わらず、楽しさも伝えたい。
「構えて動けた」「ねらったところへ打てた」から、相手との攻防へ。最初から自由に打ち合わせるのではなく、一つずつできることを増やしていく授業です。
日本武道館の公式動画20本を、活動の目的別に整理しました。防具の有無に応じた進め方と、初回50分・10時間の単元案も紹介します。授業案は資料を参考にした提案で、筆者の実施記録ではありません。
活動・動画を選ぶ|今日の授業の入口
始める前に|用具・場所・相手を確かめる
教師が用具と装着状態を確認し、打つ場所・受け方・強さ・停止の合図を指導します。指導体制や安全な練習条件が整わない場合は、対人の打突を行いません。
| 確認するもの | 授業前・活動中のチェック |
|---|---|
| 竹刀 | 割れ・ささくれ、先革の破れ、弦・中結の緩み、鍔の固定を確認。不具合があれば使用を止める。テープで応急補修して使い続けない。 |
| 防具 | 破損、ひもの緩み、体への適合を教師が確認。着装を生徒同士の点検だけで済ませない。 |
| 場所 | 床の滑り・ささくれ・段差を確認。振り上げる範囲、後退する範囲、待機場所を分ける。 |
| 体調 | 痛みや不調は申告して中止。室温・湿度と活動負荷に応じて休憩・給水・活動変更を行う。 |
| 約束 | 説明中は振らない。合図で全員止まる。相手の準備を確認してから始める。 |
竹刀点検の詳しい項目は日本武道館「Ⅱ章」冊子17ページを参照。竹刀の分解・調整や修理は、扱いに習熟した指導者・専門店等に確認します。
この記事の入門案では、突き、体当たり、激しい自由な打ち合いは扱いません。経験者がいても、初心者へ強い打突を受けさせる役割にはしません。必要に応じて地域の指導者等と連携し、学校の安全管理の下で進めます。
授業の軸|動きを覚えるだけでなく、相手を見て選ぶ
礼法・姿勢・足さばき。
相手と距離を保つ。
安全な条件で基本の打ち。
打った後まで姿勢を保つ。
相手の動きを見て判断。
約束した簡単な攻防へ。
「大きな声が出たか」だけを目標にせず、用具の扱い、姿勢、打つ場所、相手への配慮を合わせて見ます。礼も、形をそろえることに加えて「一緒に学ぶ相手を大切にする行動」と結び付けます。
公式動画一覧|20本から必要な動きを選ぶ
日本武道館「少年少女武道指導書・剣道」の動画です。一覧は教員の引き出しで、全員に20項目を習得させる意味ではありません。動画を見る観点を一つ決め、教師の実演と短い練習へつなぎます。
| 場面 | 見たい動画へ |
|---|---|
| 楽しさの入口|動きを合わせる | 剣道じゃんけん / 送り足じゃんけんリレー |
| 礼法・構え・足さばき | 立礼 / 座礼 / 座り方と立ち方 / 中段の構え / 構え方と納め方 / 足さばき(体さばき) / 間合 / 素振り |
| 防具の扱い・体の準備 | 剣道具の着装 / 剣道具の外し方 / 準備運動・整理運動 |
| 基本の打ち方|教師が受け方も確認 | 面打ち(正面打ち) / 踏み込み足による正面打ち方と打たせ方 / 小手(右小手)打ち / 胴(右胴)打ち / 正面の受け方 / 小手(右小手)の受け方 / 胴(右胴)の受け方 |
楽しさの入口|動きを合わせる
導入の活動候補です。競争の速さを優先せず、送り足や相手を見ることを課題にします。動画の配置・人数をそのまま再現せず、接触を避けられる広さと動線に調整してください。
剣道じゃんけん
日本武道館・少年少女武道指導書
送り足じゃんけんリレー
日本武道館・少年少女武道指導書
礼法・構え・足さばき
最初は竹刀なしで姿勢や足の動きを確かめてから。竹刀を持つ活動では、隣や後ろの人まで含めて間隔を取り直します。
立礼
日本武道館・少年少女武道指導書
座礼
日本武道館・少年少女武道指導書
座り方と立ち方
日本武道館・少年少女武道指導書
中段の構え
日本武道館・少年少女武道指導書
構え方と納め方
日本武道館・少年少女武道指導書
足さばき(体さばき)
日本武道館・少年少女武道指導書
間合
日本武道館・少年少女武道指導書
素振り
日本武道館・少年少女武道指導書
防具の扱い・体の準備
着装は急がせず、一度止めて教師が確認する時間を確保します。身体的な事情で正座が難しい場合などは、姿勢・活動を調整します。
剣道具の着装
日本武道館・少年少女武道指導書
剣道具の外し方
日本武道館・少年少女武道指導書
準備運動・整理運動
日本武道館・少年少女武道指導書
基本の打ち方|教師が受け方も確認
受け方の動画は、主に教師が指導手順を確かめるための資料です。防具なしの生徒に身体への打突を受けさせず、実施する練習の用具・装着条件を教師が確認します。面が安定してから、扱う技を選びます。
面打ち(正面打ち)
日本武道館・少年少女武道指導書
踏み込み足による正面打ち方と打たせ方
日本武道館・少年少女武道指導書
小手(右小手)打ち
日本武道館・少年少女武道指導書
胴(右胴)打ち
日本武道館・少年少女武道指導書
正面の受け方
日本武道館・少年少女武道指導書
小手(右小手)の受け方
日本武道館・少年少女武道指導書
胴(右胴)の受け方
日本武道館・少年少女武道指導書
防具の有無で、練習の道筋を分ける
| 条件 | 活動の例 | 進める前に |
|---|---|---|
| 防具を使わない | 礼法、構え、足さばき、素振り。安全な教材・打突台を用いた練習や、接触しない動きの課題。 | 人の身体を竹刀で打たない。教材の固定、打つ方向、待機位置を確認する。 |
| 防具がある | 着装→教師が確認→打つ部位を決めた約束練習→条件を限定した簡単な攻防。 | 打ち方だけでなく受ける側も指導し、教師が見取れる組数で行う。 |
| 防具が足りない | 着装練習・基本動作・観察を短時間で交代。 | 衛生管理と体への適合を優先。着脱に必要な時間を削らない。 |
日本武道館の「Ⅴ章」には、防具あり・なしそれぞれの学習指導計画が載っています。下の単元案だけで全てを決めず、設備や生徒の経験に合う公式案と照合してください。
面打ちは、打つ前・打つ瞬間・打った後で見る
相手の準備と間合を確認。
構えをつくる。
教わった打突部で
決めた場所を捉える。
姿勢と構えを整える。
相手から意識を離さない。
「当たれば一本」ではなく、打突部・打突部位、姿勢、残心などを教師が見本で示します。最初の観察は「構え」「ねらった場所」「打った後」の一つに絞ると、仲間へ助言しやすくなります。
簡単な攻防へ|技と役割を限定する
基本動作と安全な打突が確認できたら、教師が選んだ一つの技で、打つ側・機会をつくる側を決めた練習へ進みます。最初から自由対戦や勝ち残りにせず、短い時間で役割を交代します。
| 段階 | 課題の例 |
|---|---|
| 約束して1本 | 双方が準備し、指定の部位へ1本。停止して、打った後の姿勢を確認。 |
| 機会を見つける | 受ける側の決められた動きを見て、打つ機会を選ぶ。 |
| 見て伝える | 観察者が一つの観点でよい点を伝え、次の1本で試す。 |
| 条件を限定した攻防 | 教員が安全・技能の準備を確認できた場合に、技・時間・組数を限定して行う。 |
恐怖感が強い生徒は、距離をとった動きの練習や打突台へ戻れるようにします。痛みや怖さを我慢することを、意欲の評価に置き換えません。
つまずいたら|課題を一つに戻す
| 様子 | 練習の戻し方 |
|---|---|
| 足が交差して不安定 | 竹刀なしで送り足をゆっくり確認。速さを競わない。 |
| 腕だけで打とうとする | 素振りと足の動きを分けて確かめ、教師の合図で合わせる。 |
| 強く当てることに集中する | 対人練習を止め、打突台等でねらう場所と姿勢を確認。 |
| 着装に時間がかかる | 動画を短く区切り、教師の確認地点を決める。着装自体も学習にする。 |
| 観察の言葉が出ない | 「構え」「ねらい」「打った後」の一つを選び、よかった事実を伝える。 |
初回50分|安全と「構えて動く」を体験する
| 時間 | 活動 | 教師の支援 |
|---|---|---|
| 0~8分 | 健康観察・準備運動・安全の約束 | 用具の扱い、停止の合図、間隔を実演。 |
| 8~15分 | 剣道の入口・礼 | 短い見本を見て、相手を大切にする意味を共有。 |
| 15~25分 | 姿勢・送り足 | 竹刀なしから始め、間隔を確保して動く。 |
| 25~35分 | 構え方・納め方 | 竹刀を持つ前後で安全を確認。 |
| 35~43分 | 素振り・動きの確認 | 少ない回数で、一つの観点を確認する。 |
| 43~50分 | 整理運動・振り返り・片付け | 今日できたことと次の課題を一言で残す。 |
時間配分は提案です。初回に対人打突は入れず、用具の説明や安全確認に時間が必要なら活動を減らします。
10時間の単元例|基本から簡単な攻防へ
中学校1・2年の入門を想定した、防具・打突用教材と指導体制を確保できる場合の提案です。時数や経験に応じて調整し、安全・技能の準備が整うまで次の段階を急ぎません。
| 時 | 主な学習 | 振り返りの視点 |
|---|---|---|
| 1 | 安全・礼法・構え・足さばき | 相手と用具を大切に扱えた? |
| 2 | 送り足・素振り・間合 | 無理なく動ける距離は? |
| 3 | 打突用教材で正面打ち | ねらった場所と姿勢は? |
| 4 | 防具の着脱・基本の打ち方と受け方 | 安全な準備を自分でも説明できる? |
| 5 | 面の約束練習 | 打った後に構えを整えた? |
| 6 | 小手・胴など、扱う技を選んで練習 | 打ち方・受け方の違いは? |
| 7 | 相手の動きから打つ機会を選ぶ | どの動きを見て判断した? |
| 8 | 課題別練習と仲間の助言 | 助言を次の1本に使えた? |
| 9 | 条件を限定した簡単な攻防 | 選んだ技と機会を説明できる? |
| 10 | 学習成果の確認とまとめ | 上達したこと、安全・相手への配慮は? |
上の対人打突を防具なしで行うことはできません。公式資料の防具なし・リズム剣道の例を確認し、安全な教材と活動に置き換えて年間計画を整えます。
そのまま見せられる|3つの確認カード
□ 用具を確かめた
□ 相手と周囲を見た
気になることは先生へ。
□ 観点を一つ決めた
□ 打った後まで意識した
次に直すのは__。
□ 合図と約束を守った
□ よかった動きを伝えた
助言で変わったのは__。
評価は勝敗だけでなく、基本動作や簡単な攻防、課題を見つけて練習を選ぶ理由、安全・協力・相手を尊重する姿を合わせて見取ります。
公式資料|授業計画と用具点検を確認する
Ⅱ章|基本・用具・安全管理
竹刀点検は冊子17ページ。用具の名称や防具の扱いも確認できます。
Ⅴ章|学校授業での指導
中学校の指導計画・評価・防具の有無に応じた授業例を確認できます。
技術・授業例をさらに調べるときは、動画と誌面を同じ項目で見比べると準備しやすくなります。PDFは公式サイトで開く方式です。
教材研究に役立つ参考書
有田祐二著『剣道入門』(中学デビューシリーズ/ベースボール・マガジン社、2024年)。中学生の入門向けに、基本動作から応用動作、稽古法まで扱う本です。授業の時数に合わせて、必要な基本を選ぶための参考に。
授業用の単元計画そのものではありません。版・在庫・購入条件はリンク先でご確認ください。
書籍ライブラリーの「武道」から、剣道・柔道などの関連書を比較できます。
次の授業準備に|編集できる実践教材
中学校の柔道・バレーボール・ダンスでは、授業に合わせて使える教材を用意しています。授業の進め方と収録内容は各ページで確認できます。
参考資料・動画の掲載元
資料・リンク確認:2026年9月15日。動画は掲載元のプレーヤーで表示しています。


